私たち日本血液製剤機構(JB)は、『善意と医療のかけ橋』を基本理念として、国民の皆さまからいただいた献血から血液製剤を製造し、人々の健康に貢献することを使命に掲げ、2012年に事業を開始しました。「日本国民が使用する血液製剤は国内の献血で賄う」という血液法の理念に則って設立された、営利を目的としない一般社団法人であり、将来にわたる安心・安全な血漿分画製剤の安定供給を目指して活動を続けています。
JBで製造された血液製剤は、希少疾患とされる神経難病や重症感染症などの治療に役立てられ、患者さんの生命と健康を支える重要な役割を果たすことから、私たちの事業そのものが、社会のサステナビリティの実現に深く結びついているといえます。このため、JBでは、基本理念・ビジョンにつながる5つのテーマに、SDGsに関連する2つのテーマを加えた7つの重要課題を策定して、多角的に取り組んできました。
その取り組みとして、JBでは、血液製剤の国内自給率向上と生産基盤強化を目指して、分画工程を集約する千歳工場「M1棟プロジェクト」やフィブリノゲン製剤の精製工程及び免疫グロブリン製剤の調合分注工程の基盤を新たに強化する京都工場「JBKプロジェクト」をそれぞれ並行して進めてきました。2025年度、M1棟の本格稼働が始まり、JBKも年内に稼働を開始する予定です。
近年、血液製剤の医療需要は急速に高まりを見せています。とくに免疫グロブリン製剤の需要は急増しており、安定供給に課題が生じています。そこで、JBでは、将来においても血液製剤を必要とする患者さんに安定的に届けられるよう、関連する医学会や有識者などと協力して国に働きかけを行い、その結果、厚生労働省において、2024度から血漿分画製剤生産体制整備事業がスタートしました。2025年度は、JBにおいて、その事業に係る具体的な計画立案を進め、国内自給率向上と生産拡大に向けた取り組みを推進していく所存です。
また、事業活動におけるサステナビリティ実現に向けては、国際標準化機構(ISO)・CSR活動に造詣の深い職員をアドバイザーに、若手職員を中心としたワーキンググループを結成し、SDGs推進、サプライチェーン(Scope1,2,3)でのカーボンニュートラル(CN)推進に向けた施策の検討・推進を行っています。その一環として、使用電力の段階的なCN電力への切り替え、省エネタイプ設備への更新や太陽光発電の導入などを進めています。また、環境問題や地域課題の解決に向けて、工場周辺の美化活動や資源回収への協力などにも積極的に取り組んでいます。さらに、私たちは広く世界にも目を向けて、経済・医療格差や人権の課題解決に向けた支援活動を展開しています。血友病Aの治療に使用される血液凝固第Ⅷ因子製剤は、世界では7割の患者さんが製剤の投与を受けられていない現実があります。そこで、JBでは、2022年度から世界血友病連盟の人道支援プログラムに製剤の無償提供を継続してきました。また、2015年から、タイ赤十字血液センターと血漿分画製剤の品質試験の技術提供、共同研究を行っています。
国民の皆さまからいただいた献血という「愛」を血漿分画製剤という「力」に変えて、患者さんの健康、医療の向上に寄与することがJBの事業の根幹です。献血にご協力いただいた国民の皆さまの善意、そして、血液製剤で健康を取り戻した患者さんやそのご家族の喜びの声が、私たちの明日への活動の原動力です。これからも、皆さまのご意見に耳を傾けながら、患者さんや医療関係者の皆さんに信頼される高品質な製剤を安定的にお届けすべく、職員とともにまい進してまいります。
一般社団法人
日本血液製剤機構 理事長
