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第45回日本川崎病学会学術集会 ランチョンセミナー4-講演2

第45回日本川崎病学会・学術集会
ランチョンセミナー4
2025年10月18日開催(審J2603301)

講演2

川崎病冠動脈後遺症ゼロを 目指した地域連携

福岡赤十字病院 小児科 部長 古野 憲司 先生

私はこれまで数多くの川崎病患者を診療してきており、現在は福岡赤十字病院において、全症例で 主治医または指導医として関わっている。本講演では、冠動脈後遺症をゼロにするための地域連携 と診療体制の強化の要点と実践を紹介する。

川崎病冠動脈後遺症ゼロへの挑戦と診断の課題

 川崎病の目標は、「心後遺症ゼロ」である。しかし近年のデータでも後遺症発生率はゼロにならず、大変歯がゆい状況である1(表1)。ゼロにならないとしても、特に中等瘤・巨大瘤は避けたい。Miuraらが『JAMA Pediatrics』に発表したデータでは、小瘤症例で約20年間心事故ゼロという結果が示されている2。これは大きな励みとなっている。

 川崎病冠動脈瘤ができる理由は、①川崎病と診断されなかった症例3, 4、②診断・治療が遅れた症例、③発症早期から既に冠動脈瘤が形成されている症例、④治療抵抗性で勢いを止められない症例の4つと、まれではあるが⑤治療に反応したのに後から冠動脈瘤ができてしまった症例5に分類できる。かつて、成人の循環器診療の現場で川崎病未診断例が相当数存在することを痛感したことがある。急性心筋梗塞症例で冠動脈瘤による血栓閉塞を認めた際、循環器内科の部長に川崎病の症状を確認するか聞いたところ、必ず意識しているとの回答であった。一方、若手医師に確認したところ、川崎病について十分な認識がされていない様子であった。

 文献を検索するとさまざまな症例が報告されている。Danielsらの報告では、サンディエゴの4病院で40歳未満の成人261例の冠動脈造影のうち16例に冠動脈瘤を認め、13例が川崎病晩期後遺症と診断されている3Mitaniらの報告でも、急性冠症候群(ACS)を発症した成人67例中35例が川崎病と推定され、適切な治療で予防できた可能性がある4

 日常診療で診断している川崎病は「氷山の一角」であり、水面下には未診断例が多数存在する可能性があるということである。

地域連携と診療体制の強化

 『川崎病診断の手引き』は広く知られているが、実際の患者に当てはめて鑑別するのは容易ではない。そのため見逃されるケースが生じ、結果として診断・治療の遅れにつながっている。例えば、開業医からの紹介状に「頸部リンパ節腫脹なし」と記載されていても、実際には房状腫脹を認めることがある。こうした見逃しを防ぐためには、「川崎病が少しでも頭をよぎったら心エコー検査を」という意識が重要である。

 この意識は小児科だけでなく、内科・皮膚科・耳鼻科・眼科など、川崎病を想定しにくい他科の医師にも広げる必要がある。診断されなかったことが診断・治療の遅れに直結するため、私は福岡市医師会で川崎病をテーマに講演し、「川崎病は見逃しがち」であることを強調した。結果として、さまざまな科の開業医に注目され、認識向上につながったと考える。

 また、心後遺症の出現率を診断別に見たところ、不定型例や不全型でも瘤形成リスクがあるため、その意味からも早期紹介が重要である1。診断が遅れた症例としては、3歳児症例では眼球結膜充血がありながら溶連菌感染症として治療され、11病日の心エコーで冠動脈瘤が発見された例6や、自験例で、主要症状が揃わないため抗菌薬治療が継続され、最終的にZ score 7程度の瘤形成に至った例もある。これらの経験から、発熱+結膜充血+抗菌薬無効なら、症状の揃い方に関わらず心エコー検査をしてほしいと思う。

そこで福岡赤十字病院では、川崎病診療強化のため積極的に心エコーを受け付けようと、従来は週2回の循環器外来のみだったが毎日の受け入れを可能とした。また、スタッフ全員がエコーを習得し、初心者でも基本評価が可能となった。最新装置では初回使用者でも十分な画像が得られ、保存画像を後でレビューすることで診断精度を保てる。福岡市医師会を通じた啓発活動により、2024年4月以降の紹介患者数は月5~10例から大幅に増加した(図1)。このことからもわかるように真の川崎病患者紹介が増え、エコーのみで除外できる症例も含め、地域との良好な連携が確立した。 

年長児~学童期の川崎病の特徴

 鹿児島県のデータ(20112016年、383人入院)で、初診時に川崎病と診断した事例を除き、初期治療が開始された62人を分析すると、年齢が高い症例では頸部リンパ節炎が圧倒的に多く、月齢の低い症例では不明熱や尿路感染症が多いことが判明している5(図3)。また、頸部リンパ節の腫脹の多くは胸鎖乳突筋深部の上深頸(Level Ⅱ)に検出されるため、そのことを念頭に置いておくと診断の参考となる15。われわれの施設では、川崎病を疑う際の重要なアプローチとして、心エコー検査の実施と併せて頸部リンパ節エコーも積極的に行い、診断の精度向上に努めている。

 頸部リンパ節腫脹は、化膿性リンパ節炎との鑑別が必要になる。川崎病ではリンパ門部から血流が認められるのも特徴である。一方、化膿性リンパ節炎では一般的に単一優位の腫大リンパ節が多く、境界不明瞭・内部不均一となり、壊死やリンパ門消失を伴いやすい。カラードプラでは、内部の不均一病変や低エコー域に血流を認めない所見がみられる9, 1517

 さらに、小児心エコーは診療報酬が高く(880点+乳幼児加算)、病院経営にも有益である。これにより小児科外来単価が向上し、院内での小児科の地位向上にもつながっている。

 ところで、開業医が「川崎病が疑われるから血液検査を」という場合、多くはCRPや白血球を指すが、これは問題である。CRP低値でも冠動脈病変(Coronary Artery LesionCAL)を呈する症例もあり(表2)、全国調査でもCRP 1以下の症例が報告されている7。『川崎病診断の手引き』でもCRPは参考条項の「免疫グロブリン抵抗性に強く関連する」項目として記載されているのみである8。したがって「血液検査」ではなく「心エコー検査」を地域に浸透させることが重要である。

 最近経験した症例としては、6カ月男児で5日間発熱、CRP 2程度、BCG部位軽度発赤という状況で開業医から連絡を受け、緊急受診とした。診察でギャロップリズムを聴取し、重度僧帽弁逆流と冠動脈病変を認め、翌日には三尖弁・肺動脈弁逆流が出現、下大静脈(IVC)著明拡張、呼吸状態悪化し、1日の遅れが致命的になり得た症例である。

 冠動脈瘤ができる理由のうち、「①川崎病と診断されなかった症例」と「②診断・治療の遅れ」は、われわれ地域病院と開業医の連携強化で改善可能である。一方、「③早期からの冠動脈瘤形成」や「④治療抵抗性」、「⑤遅発冠動脈瘤出現例」については、大学病院での研究推進と血漿交換などの高次治療が必要である。福岡地区では、重症例の血漿交換療法を九州大学PICUに集約し、急性期炎症の制御を図る体制を構築している。

まとめ

 川崎病冠動脈後遺症ゼロを目指すには、地域との継続的なコミュニケーションが不可欠である。気軽に相談・紹介できる関係性の構築こそ、診療向上の鍵である。①川崎病を疑った時点での心エコー検査実施、②CRP値への過度な依存の回避、③地域全体での川崎病に対する意識向上により、一人でも多くのこどもを冠動脈後遺症から守ることができると確信している。

【参考文献】

1)屋代真弓, ほか. 小児科診療. 87: 367-372, 2024.
2)Miura M, et al. JAMA Pediatr. 172: e 180030, 2018.
COI:本論文の著者のうち、日本血液製剤機構より4名が謝金を受領している。
3)Daniels LB, et al. Circulation. 125: 2447-2453, 2012.
4)Mitani Y, et al. Front Pediatr. 7: 275, 2019.
5)Matsuoka R, et al. J Pediatr. 227: 224-230, 2020.
6)Yoshimura S, et al. Journal of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery. 4: 80-83, 2020.
7)屋代真弓, ほか. 小児科診療. 77: 271-290, 2014.
8)日本川崎病学会・特定非営利活動法人日本川崎病研究センター. 川崎病診断の手引き 第6版. 2019年.

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