TOP 製剤情報一覧 疾患から探す 重症筋無力症(MG) MG Insight「重症筋無力症に対する免疫グロブリン静注療法(IVIg)」

MG Insight

MG Insight

重症筋無力症に対する免疫グロブリン静注療法(IVIg)
2026年3月
(審J2603295)

東京都立神経病院 副院長 鈴木 重明 先生
東京都立神経病院
副院長 鈴木 重明 先生

【学会活動】 日本内科学会,日本神経学会,日本脳卒中学会,日本神経免疫学会,日本神経治療学会,日本頭痛学会,日本臨床神経生理学会

【ガイドライン委員】 重症筋無力症/ランバート・イートン筋無力症候群診療ガイドライン(日本神経学会),がん免疫療法ガイドライン(日本臨床腫瘍学会),スタチン不耐に関する診療指針(日本動脈硬化学会)

【専門領域】 自己免疫疾患,重症筋無力症,炎症性筋疾患,免疫チェックポイント阻害薬による免疫関連有害事象

【業績】 英文論文数 207編,h-index 56
https://scholar.google.co.jp/citations?user=Txt-EjYAAAAJ&hl=ja
2002年2021年の重症筋無力症に関する英文論文数世界10位(Yang J et al. Medicine 102: 24, 2023)

【研究費・産業財産権】 2000年2027年,研究代表者として連続28年間10件の課題で科研費を獲得中
https://nrid.nii.ac.jp/ja/nrid/1000050276242/
抗横紋筋抗体の測定方法および測定試薬.特許第7074981号,登録日2022年5月17日

※各薬剤の使用にあたっては電子添文をご参照ください。

免疫グロブリン静注療法(IVIg)は、多数の健常人供血の血漿から精製された免疫グロブリン製剤を用いる治療法である1)。全身型重症筋無力症(myasthenia gravis:MG)の治療においても、本邦では2011年に保険適用となっており*、10年以上の使用経験を有する。
本稿では、IVIgのガイドラインにおける位置づけや、実臨床での特徴、MGに対するIVIgの使用法や有効性などについて紹介する。 *献血ヴェノグロブリンIH5%静注/10%静注の「効能又は効果(抜粋)」は「全身型重症筋無力症(ステロイド剤又はステロイド剤以外の免疫抑制剤が十分に奏効しない場合に限る)」である。なお5%静注製剤はすでに販売中止となっており、経過措置期間は2027年3月31日までを予定している。

MG治療におけるIVIg

MGは、神経筋接合部を標的とする自己免疫疾患であり、現在の治療の目的は、単なる症状改善にとどまらず、患者の生活の質(quality of life:QOL)を改善・維持しながら、可能な限り副作用を軽減し、長期管理を実現することにある。こうした治療方針のもと、IVIgは主に急性増悪期に用いられる治療法の一つとして位置づけられる1)

MG治療の歴史的変遷

MG治療は、長らく胸腺摘除術と大量の経口ステロイド療法が中心であったが、高用量経口ステロイドの長期投与によるQOL低下が問題となり、治療法の見直しが求められてきた2)。2000年以降、IVIgをはじめとする免疫調整療法や新規治療薬が導入され、治療選択肢は広がった。
こうした背景のもと、2014年に日本神経学会より「重症筋無力症診療ガイドライン2014」(以降、2014年版ガイドライン)が発行され、治療目標として、完全寛解ではなく、より多くの患者が到達可能な「経口プレドニゾロン5mg/日以下で軽微症状(minimal manifestations:MM)レベル(MM-5mg)以上」が提唱された。この治療目標達成のため、全身型MGに対しては、低用量の経口ステロイドとカルシニューリン阻害薬を早期から併用し、残存症状に対してはIVIgなどの速効性治療を用いて短期間で改善を図る、早期強力治療戦略が提案された2,3)

2022年版ガイドラインに基づく全身型MGの治療

2022年に改訂された「重症筋無力症/ランバート・イートン筋無力症候群診療ガイドライン2022」(以降、2022年版ガイドライン)の治療アルゴリズムによると、全身型MGの治療は、低用量の経口ステロイドおよび免疫抑制薬、抗コリンエステラーゼ薬で開始し、これでMMに達しない場合には早期速効性治療(early fast-acting treatment:EFT)が行われる1,4)。EFTは、治療開始早期から非経口速効性治療(fast-acting treatment:FT)を積極的に行うことで、早期改善とステロイド投与量抑制の両立を図る治療とされており1)、現状におけるFTには、IVIgおよび血漿浄化療法、メチルプレドニゾロン静脈内投与療法(ステロイドパルス療法:IVMP)があり、これらの治療を単独あるいは組み合わせて行う。
これらのFTの中でも、IVIgは臨床で広く用いられている治療法の一つであり、2022年版ガイドラインでは、MG治療における推奨が提示されている()。本邦で実施された全身型MG患者を対象としたヴェノグロブリンの国内第Ⅲ相試験において、主要評価項目である「治療開始前に対する治療開始4週後または中止時におけるQMGスコアの変化量」が対照群である血漿浄化療法と同程度の有効性を示した(p=0.8941;t検定、検証的解析結果)5)。安全性については、副作用発現率は60.9%(14/23例)であり、主な副作用は、ALT増加7件(30.4%)、AST増加6件(26.1%)、発疹3件(13.0%)、γ-GTP増加3件(13.0%)であった5)
また、2008年に報告された6つの無作為化比較試験を対象としたメタアナリシス6)では、IVIgはMGの急性増悪時に有効であり、その効果は血漿浄化療法と同等であることが示された一方、長期効果に関するエビデンスは不十分であるとされた1,6)。さらに、2010~2011年に報告されたメタアナリシスにおいても、IVIgと血漿浄化療法の有効性は同等であることが報告されている7,8)

表 Clinical Question 5-5免疫グロブリン静注療法をどのように行うか1)
表 Clinical Question 5-5免疫グロブリン静注療法をどのように行うか
推奨の強さ
推奨の強さ
エビデンスの強さ
エビデンスの強さ
「日本神経学会監修:重症筋無力症/ランバート・イートン筋無力症候群診療ガイドライン2022,p.71,2022,南江堂」より許諾を得て転載

IVIgの臨床的特徴

IVIgと血漿浄化療法は、いずれも筋無力症状の急性増悪期に用いられることが多い治療であるが、IVIgは血漿浄化療法と比較して、高齢患者や循環動態の不安定な患者における症状改善に有用と考えられている9)。また、施行に際して特別な技能や経験集積の必要が少ないため、外来でも施行可能であることもIVIgの特徴として挙げられる1)
また、近年は免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の臨床使用の拡大に伴い、ICIに関連する免疫関連有害事象(irAE)への認識が高まっている。これらirAEの適切なマネジメントは臨床上重要な課題とされており、MGもirAEの一つとして発症する場合があることが知られている(irAE-MG)10)。irAE-MGはICI投与開始後、比較的早期に発症し、短期間で急速に進行してクリーゼに至る場合もあることから、入院管理を含めた慎重な経過観察が重要とされている。2022年版ガイドラインではirAE-MGの治療は基本的には通常のMGと同様であるとされており1)、治療の基本はステロイドであるが、ステロイドや他の免疫抑制剤で十分な効果が得られない場合には、短期的な症状改善を目的としてIVIgが治療選択肢として用いられることがある11)

IVIgの推定される作用機序と使用方法

MGに対するIVIgの作用機序としては、神経筋接合部シナプス後膜における自己抗体との競合や補体カスケードの抑制などが推定されている12)。また、IVIgは、複数の免疫学的機序を介して免疫バランスを調節すると考えられており、病原性自己抗体の中和や、FcRn(新生児Fc受容体)飽和によるIgG分解促進を通じた自己抗体価低下に加え、B細胞活性化因子および補体活性化の抑制、サイトカインバランスの調節など、多面的な免疫調節作用が示唆されている13)
実際の投与にあたっては、400mg/kg/日を1日投与量とし、5日間点滴静注を行う14)。初日の投与開始から1時間は0.01mL/kg/分で投与し、副作用等の異常所見が認められなければ徐々に速度を上げてもよいが、0.06mL/kg/分を超えないように投与する14)。投与速度は有害事象の発症と関連しており、特に初回投与速度には注意する必要がある1)。IVIgは血液粘度を上昇させ、全身の循環動態に影響を及ぼすおそれがある。そのため、脳血管障害、心不全、腎不全などのリスクを個々の症例ごとに評価したうえで、投与量や投与速度を調節することが重要である1)

実臨床におけるIVIg:Japan MG Registry(JAMG-R)を通して

JAMG-Rは全国の臨床データに基づき、MG患者に対する質の高い医療を推進することを目的とした本邦の多施設共同研究グループであり15)、MG診療を専門とする神経内科医で構成されており、多数のMG患者から得られた詳細で正確な情報の蓄積を特徴とする15,16)。East Japan MG Study Groupによる2010年の予備調査以降、複数の調査が実施され、臨床データの解析を通じてMG患者の実態が明らかにされてきた15)。特に、健康関連QOLに影響する因子の特定や治療目標・治療戦略の提案は、MG治療に大きな影響を与え、2014年版および2022年版ガイドラインにも反映されている15,16)
2014年版ガイドラインの公表後は、IVIgを含むEFTによる治療が徐々に増加している。2015年の調査では、免疫療法を受けた全身型MG患者688例におけるEFTの実施率は、36.1%(249/688例)であった17)。さらに、2021年の調査では1,710例中39%がEFTを受けており、その内訳は全身型MGで42%、眼筋型MGで30%であった15)
IVIgは従来、重症・難治例に用いられてきた一方で、ガイドライン改訂後にはIVIgを含むEFTの導入が進み、実臨床における使用が拡大しているとともに、治療戦略における役割がより明確になりつつあることが示唆される。

全身型MG治療の進展とIVIgの臨床的役割​

2011年にIVIgが全身型MGに対して保険適用となって以降、EFTの提唱・普及、分子標的薬の登場などにより、全身型MGの治療は大きく変化した18)。将来的には、分子標的薬が難治性MGに限らず、より多くのMG患者に使用される可能性もあるが18, 19)、まだ比較的新しい治療法であることから、医療コストや安全性といった課題も存在する18)。一方、IVIgは実臨床において10年以上にわたる使用経験が蓄積されており、MG治療において今後も引き続き重要な役割を担う治療法であると考えられる18)

参考文献

  1. 日本神経学会監修:重症筋無力症/ランバート・イートン筋無力症診療ガイドライン2022. 2022, 南江堂.
  2. 村井弘之:臨床神経学. 2023;63(6):345-349.
  3. 日本神経学会監修:重症筋無力症診療ガイドライン2014. 2014, 南江堂.
  4. 日本神経学会監修:重症筋無力症/ランバート・イートン筋無力症候群診療ガイドライン2022追補版2025.(https://www.neurology-jp.org/guidelinem/pdf/mg_lems2025.pdf)(2026年1月6日閲覧)
  5. 日本血液製剤機構:内部資料(全身型重症筋無力症患者における非盲検無作為化比較試験)(承認時評価資料)
  6. Gajdos P, et al.:Cochrane Database Syst Rev. 2008;(1):CD002277.
  7. Gilhus NE:Nat Rev Neurol. 2011;7(3):132-134.
  8. Miller RG, et al.:Ann Neurol. 2010;68(6):776-777.
  9. Mandawat A, et al.:Ann Neurol. 2010;68(6):797-805.
  10. 鈴木重明:神経治療. 2022;39(4):658-661.
  11. 日本臨床腫瘍学会 編:がん免疫療法ガイドライン第3版. 2023, 金原出版.
  12. Dalakas MC:JAMA. 2004;291(19):2367-2375.
  13. Dalakas MC, Meisel A:Expert Rev Neurother. 2022;22(4):313-318.
  14. 献血ヴェノグロブリンIH10%静注 電子添文. 2025年10月改訂(第4版)
  15. Suzuki S, et al.:Clin Exp Neuroimmunol. 2023;14:5-12.
    COI:本論文の著者のうち、日本血液製剤機構より3名が講演料を、1名が謝金を、1名が研究助成金(本論文とは関係なし)を受領している。
  16. 村井弘之, ほか:福岡医誌. 2015;106(12):309-315.
  17. Utsugisawa K, et al.:Muscle Nerve. 2017;55(6):794-801.
  18. 寒川真:CLINICAL NEUROSCIENCE. 2023;41(11):1457-1461.
  19. 鈴木重明:神経治療. 2024;41(5):755-758.

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