第22回 プレゼンテーションの極意
福井大学医学部附属病院 総合診療部 教授
林 寛之 先生
審J2501281(2025年3月更新)
福井大学医学部附属病院 総合診療部 教授
林 寛之 先生
審J2501281(2025年3月更新)
指導医はただ知識や技術を持っていればいいと言うものではない。
「俺の背中を見て育て!」「技術なんて盗むものだ!」なんて指導をしているとどんどん「ゆとり世代」の研修医達は引いていく。まるで骨董品を見るような目つきになっていることに気づくだろうか。骨董品は骨董品の良さがあるが、骨董品に興味のない世代に、ちゃんと興味を持たせてこそ「指導医」の面目躍如ではないだろうか。
非常に内容のある大事なことを伝えているはずなのに、相手が聞いていないのでは意味がない。「そこまで研修医に気を遣わなくてもいい!」という声が聞こえてきそうだが、はたしてそうだろうか?研修医を育てることはすなわち患者さんが恩恵を受けることであり、研修医を有能な臨床家に育てることで、指導医が救う患者さんの数よりはるかに多くの患者さんが恩恵を受けることになるはずだ。指導医は素晴らしい仕事をしているのだ(フンフン:荒い鼻息の音!)。
また我々指導医は、研修医に対してではなく、患者さんに対してはあの手この手で説明し、患者さんが受け取りやすい形で指導しているではないか。しっかりした患者さんには詳細な説明をして決定権も患者さんに与えて共同作業をし、依存的な患者さんには本人の意思を引き出しつつ安心してもらえるように声掛けを繰り返す、などと個別に手法を変えて患者指導を普通に行っているではないか。患者指導も看護師指導も研修医指導も基本的に同じなのだ。患者さんだけを指導するのが医者だとしたらさびしい話だ。ドクターとはラテン語で「教える」という言葉を語源に発しており、教えることは医者の仕事のコアになっていると自覚して初めていい指導医になれるのだ。
ここで相手に伝わるプレゼン法をチェックしてみよう。お経のような指導では誰も耳を貸してはくれない。いかに相手をアクティブに巻き込んで、相手の興味をそそり、そして自分も楽しむかが成功のカギだ。まずは「ACTIVE ABCs」で漏れや抜けのない感動のプレゼンテーションを心がけよう。
最終チェックは「SUCCESS」で!
プレゼンテーションの準備ができたら最終チェックをしよう。うまくいったと思っても、それからのチェックをしておきたい。「アイデアのちから」によると「SUCCES」というチェック項目を推奨している。これでは成功SUCCESSの綴りが完成していない。最後にS(Service)を加えて改編してみた。
これであなたもプレゼンの達人になれるはず!指導医は、「研修医をその気にさせてナンボ」の商売だ!(^o^)
参考文献
チップ・ハース, ダン・ハース. アイデアのちから 日経BP社 2008
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