血友病とは?

血友病とはどんな病気ですか?

血を止めるしくみ(止血:図1)がうまく働かないために、血が止まりにくい病気です。止血には、主に血管の収縮、血小板けっしょうばん血液凝固因子けつえきぎょうこいんし1)が関わります(図1)。血液凝固因子には、第いち因子から第ⅩⅢじゅうさん因子まであります(図2)。各血液凝固因子は、順々に“連鎖反応”を起こして、最終的にフィブリン(図2)を作り、出血を止めます。このしくみの中で、血液凝固第はち因子あるいは第きゅう因子が少ない(欠乏している)ためにフィブリンができず、止血がうまくいかない病気が血友病です。

1血液凝固因子:
血を固めるタンパク質で、Ⅰ、のようにローマ数字の番号がそれぞれについています。第Ⅰ〜ⅩⅢ因子まで12種類あります(第ろく因子は欠番)。第よん因子は発見時は他と同じ仲間と考えられていましたが、その後の研究で、タンパク質ではなくカルシウムイオンであることがわかりました。

(図1)止血のしくみ

血管が破れると血管の収縮が起こり、傷口を小さくします。次に血液中にある血小板が傷口に集まってきて、血小板による血栓けっせんを作り、傷口をふさぎます。これが一次止血(血小板血栓)と呼ばれるものです。血小板による血栓は、血液凝固因子によって作られたフィブリンによって、はがれにくいフィブリン血栓になります。これを「二次止血」といいます。


(図2)血液凝固因子の働き

血友病Aと血友病Bの違いは何ですか?

血友病Aは血液凝固第Ⅷ因子が少ない、血友病Bは血液凝固第Ⅸ因子が少ない病気です。
血友病Aの患者さんは5,533人、血友病Bの患者さんは1,205人と報告されています(令和2年度血液凝固異常症全国調査報告書)。

重症度というのは何ですか?

血液中にある凝固因子の働く能力(凝固因子活性2)によって定める、症状の度合いのことです(図3)
重症度は、出血回数や、出血の程度を予測するのに役立ちます。

2凝固因子活性:
凝固因子のタンパク質としての機能を測定したもので、血友病でない人(健常人けんじょうにん)の機能を100%として算出します。通常、凝固因子の量が少ない状態では凝固因子活性も低下します。

(図3)血友病の重症度
分 類血液中の第Ⅷ因子(または第Ⅸ因子)の濃度(活性)
(複数回検査を行った時の最も低い値)
重 症1%未満
中等症1~5%未満
軽 症5~40%未満
凝固因子が少ないと出血しやすいのね だから、出血しやすい重症の患者さんはいつも注意していないとね

血友病は遺伝する病気ですか?

血友病は遺伝する病気です。性染色体の一種であるXエックス染色体せんしょくたい3)に「変異」があると第Ⅷ因子や第Ⅸ因子がうまくつくれなくなります。

3X染色体:
X染色体とは性染色体の一種です。

血友病の保因者とは何ですか?

血友病の保因者とは、「2本のX染色体のうち1本に血友病の原因となる遺伝子変異を持っている女性」のことです。もう1本の正常なX染色体の働きで、血液を固めて出血を止める「凝固因子」を作ることができるので、血友病を発症することは基本的にはありません。図4に、保因者となる可能性や、保因者の女性の、子供への遺伝を説明します。


(図4)血友病の遺伝のパターン例
  1. 父親が血友病、母親が非保因者の場合 1.保因者となる可能性
    男性の血友病患者さん(性染色体はX'Y)がX染色体に変異のない女性(XX)と結婚した場合
    生まれてくる子は、1/2の確率で女の子と男の子になり、性染色体の組み合わせは4通りが考えられます。女の子は、お父さんのX'染色体とお母さんのX染色体を受け取るため、全員が1本に変異のあるX'Xになります。この女の子は血友病ではありません。しかし、血友病を伝える遺伝情報を持っています。そのため、保因者といわれます。男の子は、お父さんのY染色体とお母さんのX染色体を持つので、どの男の子もX染色体に変異はなく、血友病ではありません。
  2. 父親が非血友病、母親が保因者の場合 2.保因者の女性の子供への遺伝
    保因者の女性(X'X)が血友病ではない男性(XY)と結婚した場合
    生まれてくる男の子は、お父さんのY染色体と、お母さんのX'X染色体のどちらか1本を受け取るので、1/2 の確率(全体の確率では1/4)で血友病の男の子が生まれます。生まれてくる女の子は、お父さんのX 染色体とお母さんのX'X 染色体の1本を受け取るので、1/2 の確率(全体では1/4 の確率)で保因者になります。
監修:
藤井 輝久先生
広島大学病院 輸血部 准教授