どんな治療?

発症年齡、眼筋型、全身型、重症度、自己抗体検査結果、胸腺画像異常の有無などにより治療法が選択されます。内服薬による対症薬物治療や長期的病態改善治療、あるいは免疫グロブリン療法や血液浄化療法による即効性の短期的病態改善治療などがあります。多くの場合これらを組み合わせた治療 が行われます。
発症年齡、眼筋型、全身型、重症度、自己抗体検査結果、胸腺画像異常の有無などにより治療法が選択されます。内服薬による対症薬物治療や長期的病態改善治療、あるいは免疫グロブリン療法や血液浄化療法による即効性の短期的病態改善治療などがあります。

* 抗アセチルコリン受容体抗体**が陽性で、これらの治療で効果不十分な場合に、短期的病態改善治療としてエクリズマブ(注射薬)が使われることがあります。

* 多くの場合これらを組み合わせた治療が行われます。

重症筋無力症の治療の流れ

重症筋無力症の治療の流れ概要図

+症状に応じて追加する治療です。組み合わせや順序は患者さんによって異なります。

1)症状によっては、胸線摘除術の前にステロイド、免疫抑制薬、免疫グロブリン、血液浄化療法などの治療を行うことがあります。

2)早期発症とはおおむね40歳台までの発症をいいます。このうち胸腺の肥大(過形成)が疑われる場合、胸腺適除術が考慮されることもあります。

3)眼瞼下垂に有効ですが、効果には個人差があります。全身型の患者さんの眼瞼下垂にも使用可能です。病院によっては使用できません。

対症薬物治療

眼や全身の症状(脱力や疲れやすさ)の改善を目的とする治療法です。

抗コリンエステラーゼ薬(内服薬)

神経の末端から放出されるアセチルコリンを分解するコリンエステラーゼ(酵素)の働きを抑えることで、神経筋接合部のアセチルコリンが増加します。アセチルコリンが増えれば神経から筋肉への刺激の伝達が改善され、眼や全身の症状が良くなる治療薬です。経口薬で効果が早くみられますが、その作用は一時的です。

注意点

・抗マスク抗体が陽性の場合は、過敏症状が出やすいため投薬はひかえるか、少量で慎重に行います。

長期的病態改善治療

長期的に重症筋無力症の免疫異常を改善して、筋無力症状を良くする治療です。抗アセチルコリン受容体抗体や抗マスク抗体が陽性の場合は、抗体価の変動を治療効果の参考にすることがあります。

胸腺摘除術

画像診断検査で、胸腺腫があれば胸腺摘除術を施行します。胸腺腫がない全身型の場合、年齢や症状、自己抗体の種類などを考慮して胸腺摘除術を行います。

ステロイド薬(内服薬)

ステロイドは、副腎から分泌されている副腎皮質ホルモンを人工的に合成した薬です。自己抗体の産生を抑えることで、神経から筋肉への指令伝達が改善され、筋力が回復します。ただし、長期間の服薬が一般的です。ステロイド薬の早すぎる減量で、症状が悪化することがあります。

ステロイド薬の副作用(服用しているときの注意)

ステロイド薬は、十分な治療効果があり、副作用が最少になるように服用量を設定します。

主な副作用

  • 顔が丸くなる(満月様顔貌)
  • 体重増加
  • 骨粗鬆症
  • 糖尿病
  • 高血圧
  • 高脂血症
  • 消化性潰瘍
  • 感染症
  • 白内障
  • 緑内障
  • など

ステロイド薬以外の免疫抑制薬

ステロイド薬と同様に、免疫異常を改善することにより筋無力症状を回復することができます。この薬はステロイド薬と一緒に、あるいはステロイド薬が使えない場合、また胸腺摘除術の効果が不十分な場合に使用します。主治医から薬の効果と副作用などをよく聞き、十分に理解して治療しましょう。

注意点

・ステロイド薬などの減量や中止で、症状が悪くなった場合は、早目に主治医と相談してください。

短期的病態改善治療

全身の症状が重い場合(重症)、症状が急激に悪化した場合(急性増悪)、他の治療で効果が不十分な場合などで実施します。

免疫グロブリン療法

献血ヴェノグロブリン®IHを1日あたり400mg/kg体重を5日間連日点滴静注します。本治療は、臨床試験において血液浄化療法と同程度の効果が確かめられています。また、血液浄化療法のような特別な装置は必要なく、通常の点滴で簡便に行うことができます。血液浄化療法で特に注意が必要な、血圧低下や細菌感染などの問題が少なく、高齢者や体格の小さな患者、全身状態が不良な場合でも実施しやすいという利点があります。

注意点

・血液浄化療法に比べ効果発現が遅延する傾向があります。

血液浄化療法

人工透析のような特殊な装置を用いて、抗アセチルコリン受容体抗体などの自己抗体を血液中から取り除く治療法です。通常は2週間に5回程度行います。効果は即効性で、一時的に症状の改善を期待する場合に用いられます。血液浄化療法には、免疫吸着法、二重膜ろ過法、単純血漿交換法があります。

注意点

・小児や高齢者、全身状態が不良な場合は、実施が困難なことがあります

・血圧低下、出血や血栓形成、細菌感染などの副作用が報告されています

・抗マスク抗体が陽性の場合は、二重膜ろ過法か単純血漿交換法が選ばれます

エクリズマブ(注射薬)

抗アセチルコリン受容体抗体が陽性の全身型重症筋無力症で、免疫グロブリン療法や血液浄化療法では症状の管理が困難な場合、補体の働きを抑えて眼や全身の症状を改善します。抗マスク抗体陽性の全身型重症筋無力症の場合は、補体が関与しないため使いません。

注意点

・治療開始2週間前までに髄膜炎菌ワクチンの接種を行います。治療開始後に、発熱、頭痛など髄膜炎菌感染症が疑われる症状が見られた場合、直ちに主治医と連絡をとり適切な処置や治療を受けましょう。