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1.はじめて親もとから離れる入園

Q

幼稚園に入る年齢が近づきました。入れるかどうか心配です。

A

いろいろ心配なことがあっても親が24時間ついていられるのは保育園や幼稚園に入るまで。その後は小学校、中学校、高校と徐々に親の目が届かない時間が増えていくのは当然です。そのような幼稚園・学校生活の中で病気のことを周囲に理解してもらっていれば、親としてもちょっと安心。しかし、知らせることにより差別や偏見の目にあっても困ります。血友病にとって一番安心なはずの水泳の授業で一人だけ違った水泳帽をかぶってほしいとか、修学旅行の参加を自粛してほしいと言われた経験を持っている患者さんもいました。さすがに今はそのような事例はまれになったものの、保育園や幼稚園の入園を断られることはあります。多くの皆さんは告げているのでしょうか。結論から言うと、現在は中学校までは学校に告げる方がほとんどです。私どもの患者さんで言えば、ほぼ全員が幼稚園や学校に伝えています。ここ数年で3例ぐらいで入園を断られた方がいるのも事実ですが、保育園、幼稚園へ最終的に入園できなかった方はおりません。

しかし、地域的に通える幼稚園がひとつしかない、兄姉と同じ幼稚園にぜひ入園させたい、送迎付きの幼稚園でないと困るといった家族もいるかもしれません。入園を認めてもらうためのコツは何か?お子様が他の子と同じにやれることを幼稚園や保育園に理解してもらうことです。そのためには親が他のお子様と同じにやれることを信じられなくてはなりません。出血しやすいから目が離せない。血が止まらないから他の子のようにはさせられない。そんなことを考えていませんか?血友病は出血しやすい病気でも、血が止まらない病気でもありません。出血が止まりにくいだけで、出血するまでは他の子と一緒です。出血してからの措置が違うだけです。遊びでも運動でも同じにやることを前提にして、入園しても平気ということに親子で自信を持ってください。

さて、園に理解してもらうためには、もし入園予定者向けの行事があったら必ず参加し、兄姉がいるなら幼稚園行事には邪魔にならない程度に弟を一緒に連れていきます。そして先入観なしに見たときに、普通の児と何ら変わらないことを幼稚園側に印象付けておきましょう。兄姉が先に入園した際には役員などを引き受け、先生方と親しくなっておくといった工夫をしたお母様もおり、弟の入園時に大きな力となりました。

次に病気について、いつの時点で何を言ったらいいのでしょう。願書をもらうときに「はじめから断られるようなら願書ももらいません」と強気で行くやり方もありますし、入園テストで言うケース、決定後入園までに言うケース、入園後の保護者面談で言うケース、いろいろあります。一概には言えませんが、最近は入園前に言う方が多くなりました。その言い方は様々、「病名も含めて全て話す」から「血が止まりにくい」、「足の関節が弱い」、「あざのできやすい体質」と、症状だけを言う等、様々です。それぞれの病状に応じて考えてください。その際には病院でもらえる血友病に関する学校向けの冊子を用意するといいでしょう。病院と事前に打ち合わせて幼稚園側に主治医から説明してもらうのも有効な手段です。さらに可能なら家庭注射ができるようにしておければ、胸を張って言えます、「私たちが何とかしますから園には迷惑かけません」って。いずれにしても自分たちだけで悩まずに病院にも相談してください。きっといい知恵が浮かぶことでしょう。

なお宗教系・非宗教系、公立・私立、大規模・小規模で入園しやすさに違いがあるかというご質問をよく受けますが、一般論はありません。断られた例も、入園できた例も両方あります。親が自信と熱意を持ってあきらめずに当たることが第ーです。