• 体幹を鍛えよう3 -姿勢バランス調整機能を鍛える-

Training 21
体幹を鍛えよう3 -姿勢バランス調整機能を鍛える-

最近の血友病の姿勢バランスの研究で、S.Perez-Alendaの調査では、姿勢バランスの低下は足・膝・股関節への負担が増し、出血のリスクが高くなる可能性があるが、血友病男児たちの機能検査をしたところ、健常児と比べて姿勢バランス機能が悪かったと報告されています。また、A.Seuserの調査では、血友病成人患者さんたちの片脚立ちバランス、下肢運動性、胸・背部筋力、持久力において健常者の基準値を大幅に下回っていたと報告されています。もちろん、これは血友病患者さんの全員に当てはまるわけではないですが、関節内出血を繰り返す患者さんは、もしかしたらバランス機能が低下しているかもしれません。姿勢を崩したときに転倒しないように姿勢を立ち直す動きをバランス反応と言います。自分の姿勢が崩れたことを感じるのは、視覚、三半規管の情報のほか、皮膚、筋肉、腱、関節の感覚受容器からの固有知覚情報が連動しています。各感覚器官からの刺激は感覚神経を通って脊髄と脳が受け、姿勢を立ち直そうとする運動指令が運動神経を通って全身の筋肉に行き、姿勢反応が起こります。この時、姿勢の崩れに対抗する筋活動(A:カウンターアクティビティ)、倒れる反対側へ体を曲げる動き(B:カウンタームーブメント)、頭部・腕・脚の重さを利用する動き(C:カウンターウエイト)が起きています。

姿勢バランスの分析
  1. A:カウンターアクティビティ
  2. B:カウンタームーブメント
  3. C:カウンターウエイト

学習方法

今回紹介する体操は、カウンターアクティビティ、カウンタームーブメント、カウンターウエイトなどの姿勢バランス調整を効果的に鍛えることができるDynamic Joint ControlTraining(DYJOC=ディジョック)トレーニングを紹介したいと思います。DYJOCトレーニングはバランスディスクやバランスボールなどの不安定な支持面で行うバランストレーニングです。不安定な支持面で細かい姿勢調整を行うことで関節構成体や筋、腱に存在する固有受容器の働きを活発化させ、関節の動的な制御に重要不可欠な神経-運動器の協調性を効果的に鍛えることができます。

安全性と入手しやすさで、バランスディスクを推奨します。

DYJOCトレーニングは、前回までの「体幹を鍛えよう」①と②で紹介したドローインをしながら動くことをマスターできた方の次のステップのトレーニングとなりますので、まずはドローインをマスターしてください。

DYJOC TRAINING 
ディジョックトレーニング

体重シフトの速度はゆっくり行うことが大切で、筋肉の収縮・体幹・腕・脚の動きを確かめながら行うことがコツです。転倒しないように、はじめから無理しないように、危険を感じたらすぐに足を床につくようにしてください。

バランスディスクに腰掛ける

頑丈でしっかりとした安定した椅子に、バランスディスクを座布団のように椅子の座面に敷いて、バランスディスクの中心に腰掛けます。

両足を床につけて体重移動

左右5周

両足を床にしっかりつけたまま、ドローインをしながらゆっくりとした速さで左→後→右→前→左へと一周するように体重をシフトします。

片足を上げて体重移動

左右5周(反対側も)

バランスディスクの感覚に慣れたら、片足を床から離して、ドローインをしながらゆっくりとした速さで左→後→右→前→左へと一周するように体重をシフトします。

両足を上げて体重移動

左右5周(反対側も)

片足で慣れたら今度は両足を床から離して行います。

余裕が出てきたら、眼を閉じて行うとより感覚が研ぎ澄まされます。また、手首や足首に1kg程度の重錘バンドを着けて行うと骨盤底筋群やコアマッスルだけでなく上肢・下肢の筋力アップも可能です。くれぐれも安全第一で行うようにしてください。