• 腰痛2

Training 10腰痛2

今回は急性腰痛症(ぎっくり腰)が起こりやすい動作についてのお話をしていきたいと思います。ぎっくり腰になった原因で多く聞かれるのは、「重いものを持ち上げたとき」「洗面台で洗顔したとき」「くしゃみ」「寝起きに急に飛び起きたとき」などの動作が上位に挙がります。これらに共通するポイントは「おじぎ姿勢」です。特に両膝を伸ばした状態でのおじぎ姿勢は中腰姿勢と呼ばれ、腰痛の危険動作としてよく知られています。おじぎ姿勢をテコの原理から説明すると、支点となるのが仙腸関節や腰椎関節で、頭部+体幹上半身の重さを支える筋肉は背筋群です。背筋群には脊柱起立筋群(せきちゅうきりつきんぐん)や腰方形筋(ようほうけいきん)などの大きい筋肉の他、一つ一つの背骨の間にある棘間筋(きょっかんきん)や横突間筋(おうとつかんきん)といった短く小さい筋肉があります。一番安定する身体を横から見た直立姿勢では、耳孔(じこう)-肩峰(けんぼう)-大腿骨大転子部-膝関節前部-外くるぶしの2cm前方部分のラインを結ぶ垂直線が中心線となります。おじぎをして頭部・上半身がこの中心線から離れるほど支える力は増し、支点となる腰椎椎間関節・仙腸関節の負担も増します。

学習方法

姿勢と腰椎への圧力に関する研究では、たとえば体重を50kgとすると、横向きで寝ている姿勢ですでに体重と同じ50kgの圧力が加わり、直立姿勢時で75kgの圧がかかります。手に何も物を持たなくても角度20°のおじぎ姿勢で約100kgにもなります。直立姿勢でくしゃみをしたときの圧は瞬間的に体重の7倍の約350kgにもなると言われています。また、20 °おじぎの姿勢で20kgの物を持ち上げるときに圧は300kgを超えるという報告もあります。背骨の前方部分の間にある椎間板の一つ一つの強度は、N IOSH(米国労働省)によると腰椎椎間板の限界値は約340kgであるとしていますので、理論的にはくしゃみをしたりおじぎの姿勢で20kgより重い物を持ち上げたりするたびに椎間板がダメージを受けることになりますが、実際にそうならないのは、姿勢や関節の動きや筋力でカバーして椎間板への負担が減るからです。柔軟性や筋力が低いと関節に負担を強いることになり、背筋群や筋膜、靭帯や関節包、椎間板などがダメージを受け、筋・筋膜性腰痛、腰椎捻挫、椎間板ヘルニアなどを発症します。これらを予防する基本的な考え方としては、柔軟性やパワーのトレーニングの他、「腰椎に負担の少ない動作」を練習することが重要となります。

姿勢と腰椎への圧力( 体重50kgの場合)

腰椎に負担の少ない動作の練習ポイント

重い物を持ち上げる時

重い物は、片足を一足分前に出し、膝を曲げ、物をできるだけ体に密着させ、できるだけおじぎをしないで持ち上げる。

洗面台に立つ時

洗面台では、脚を開いて、膝を曲げ、できれば洗面台を前腕で支持して、深くおじぎをしないで洗顔する。
10~20cmの踏み台を置いても良い。

くしゃみをする時

くしゃみをするときは、壁やテーブルに片手をつく。
周囲につかまる物が何も無いときは、片足を前に出して、できるだけおじぎ動作をしないでくしゃみをする。

起き上がる時

ベッドの場合

目覚めて起きるときは、ベッドでは横向きになり両脚を下ろして起き上がる。

畳の場合

畳の場合は四つ這い姿勢になってから立ち上がる。

台などにつかまって立つのも良い。

腰痛を100%防ぐことは難しいですが、ダメージを受けにくい方法でできるだけ動作を行う工夫と練習を日ごろから心掛けていきましょう。