• 熱中症を予防しよう

Training 13熱中症を予防しよう

今年も大変に暑い夏がやってまいりました。皆さまは如何お過ごしでしょうか?夏の時期、特に怖いのは「熱中症」です。毎年数万人の方が熱中症で救急搬送されており、平成29年は635人の方が命を落としています。近年の猛暑で、屋内で熱中症になるケースが増加しています。今回は、意外と知られていない熱中症についてのお話をしていきたいと思います。

熱中症の症状と救急処置

まず、熱中症が起こる発生メカニズムを見ていきましょう。人間は一定の体温を保つ為に常に熱を作り出しています。体内の熱は血液やリンパ液の循環により体表に運ばれ、表皮から発汗などにより熱が放出され、体内に熱が籠らないような仕組みになっています。しかし、運動をすることでたくさんの熱が骨格筋により作り出され、また、直射日光下や高温多湿の環境下では放熱が追い付かず、体温が急激に上昇します。放熱の能力の限界を超えると、以下の①~④の熱中症の症状が現れます。

  • 熱失神

    体内の高熱を体外へ逃がすために、たくさんの血液が四肢や体表部へ移動します。これにより、脳への血液の供給量が減り酸欠状態になり、意識がもうろうとしたり、酷いときには意識を失ったりします。

    足を高くして寝かせると通常であれば回復します。

  • 熱痙攣(ねつけいれん)

    汗にはナトリウムなどの電解質が含まれており、大量に発汗すると体液中の電解質バランスが崩れ、筋肉が収縮したまま弛緩しない痙攣状態になります。酷くなると全身の筋肉が痙攣します。

    スポーツドリンクなどで水分と食塩の補給をする(自力で水分が摂取できない場合は点滴をする)と通常であれば回復します。

  • 熱疲労

    大量の汗が出ると、体内の水分量が失われますので、脱水状態になり、全身倦怠感、頭痛、吐き気などの症状が現れます。

    スポーツドリンクなどで水分と食塩の補給をする(自力で水分が摂取できない場合は点滴をする)と通常であれば回復します。

  • 熱射病

    体内の放熱処理が間に合わなくなると、体温が上昇し続け、脳がダメージを受けてしまいます。そして意識レベル低下や呼吸障害、運動障害など、生命維持に非常に危険な状態に陥ります。

    救急車を要請しつつ、可及的速やかに冷水や送風などで全身の冷却を行います。

※実際の場面では1~4は明確に分かれて症状が現れるわけではなく、同時に発症していきますので、熱中症の症状が見られたら、すぐに涼しい場所に避難させ水分補給と急冷処置を行いつつ、意識障害(言動がいつもと違う、反応が鈍い)が少しでも見られた場合は熱射病を疑い、直ちに救急車を要請する必要があります。

熱中症の予防

熱中症は発症すると急に重症化する危険性がありますので、予防することが非常に大切です。

暑いときは無理に運動をしないことが大切です。できれば、その日の暑さ指数WBGT(湿球黒球温度)の予報情報サイトをインターネットでチェックし、暑さに合わせて日陰でできる軽い運動メニューに切り替えるなどの工夫をしましょう。気温が暑くなり始めたら1~2週間の順化期間を設けます。熱中症は特に7月後半に起こりやすく、屋外だけでなく室内の運動でも、少しずつ暑さに慣れるように運動時間や負荷を徐々に上げていくように調整しましょう。水分・塩分の補給は自由にできるようにします。体重の増減は運動前後で1%程度が理想です。定期的に休憩を入れ、休憩時間以外にも自由に飲水できる環境を整えましょう。服装は、できるだけ通気性が良い軽装薄着で、吸水速乾性の優れた素材のものを選びましょう。汗を大量にかく場合は、半袖短パンで合成繊維のものが良いです。体調不良のときは無理をしないようにしましょう。また、肥満、体力が低下している、暑さに弱い、過去に熱中症になったことがあるなどの人は気を付けましょう。特に、学校での熱中症死亡事故の7割は肥満体型だったという報告がありますので、肥満の方は要注意です。熱中症対策を万全にして、無事に暑い夏を乗り切りましょう。

暑さ指数(WBGT)測定装置
  • 実際の観測の様子

出典:環境省熱中症予防情報サイト

日常生活に関する指針
温度基準
(WBGT)
注意すべき生活活動の目安 注意事項
31℃以上
危険
すべての生活活動でおこる危険性 高齢者においては安静状態でも発生する危険性が大きい。
外出はなるべく避け、涼しい室内に移動する。
28~31℃
厳重警戒
外出時は炎天下を避け、室内では室温の上昇に注意する。
25~28℃
警戒
中等度以上の生活活動でおこる危険性 運動や激しい作業をする際は定期的に充分に休息を取り入れる。
25℃未満
注意
強い生活活動でおこる危険性 一般に危険性は少ないが激しい運動や重労働時には発生する危険性がある。
運動に関する指針
WBGT温度 熱中症予防運動指針
31℃以上
運動は原則中止
特別の場合以外は運動を中止する。特に子どもの場合は中止すべき。
28~31℃
厳重警戒
激しい運動は中止
熱中症の危険性が高いので、激しい運動や持久走など体温が上昇しやすい運動は避ける。
運動する場合には、頻繁に休息をとり水分・塩分の補給を行う。
体力の低い人、暑さになれていない人は運動中止。
25~28℃
警戒
積極的に休息
熱中症の危険が増すので、積極的に休息をとり適宜、水分・塩分を補給する。
激しい運動では、30分おきくらいに休息をとる。
21〜25℃
注意
積極的に水分補給
熱中症による死亡事故が発生する可能性がある。
熱中症の兆候に注意するとともに、運動の合間に積極的に水分・塩分を補給する。
21℃未満
ほぼ安全
適宜水分補給
通常は熱中症の危険は小さいが、適宜水分・塩分の補給は必要である。
市民マラソンなどではこの条件でも熱中症が発生するので注意。

(公財)日本体育協会「スポーツ活動中の熱中症予防ガイドブック」より