Heart Hospital

岐阜大学 医学部附属病院小児科 臨床准教授 小関 道夫先生
血液・感染症内科 臨床講師 松本 拓郎先生
薬剤部 先端医療・臨床研究推進センター 副部門長 石原 正志先生

各科の連携が密で風通しのいい診療体制

先生方が血友病の診療に携わるようになったきっかけと時期を教えてください。

小関先生研修医の時に、1歳の女性血友病患者さんを診たのが最初です。岐阜大学では外来を中心に診療しています。小児科から内科に移行された方もおりますので、私自身が診ている患者さんは多くないですが、小児科でどう関われるかを考えながら診療しています。

松本先生研修医の時に、後天性血友病の患者さんを診たのが最初です。止血治療などに携わるようになり、徐々に血栓止血領域を任されるようになりました。患者さんを診るうちに必要性を感じ勉強し始めたのがきっかけですね。

石原先生私は小児科と血液内科の担当薬剤師を長くやってきました。岐阜大学に来て、HIV診療に関わるようになったのを機に血友病患者さんと関わるようになりました。薬剤師という立場から患者さんの指導という形で診療科の垣根を越えて携われる職種ではないかと思っています。

現在の診療状況はいかがですか。

小関先生小児科では1歳から大学生までの患者さんが7名いらっしゃいます。ノンファクター製剤を使っている方や、出血時のみ凝固因子製剤を補充されている方、補充の必要がない軽症の方もいます。

松本先生私が常時診ている患者さんは重症血友病Aが2名、中等症1名、軽症1名です。他の先生が重症血友病Aで3名、血友病Bで2名診ており血液内科全体では9名となります。2024年に血栓止血外来を立ち上げて、紹介いただいた患者さんも診ています。昨年度は血友病を含めた血液凝固線溶異常症の方を40名ほど診ました。

患者さんは地域的にはどのあたりから来られますか。

小関先生岐阜市近辺にお住まいの方が多いですが、飛騨地区など遠方からも来られています。病状が安定していれば、オンライン診療も併用して受診の負担を減らしています。

松本先生内科もオンライン診療ができたらいいのですが、現在診ている血友病患者さんは他の疾病で手術が必要だったり、治療が必要であったりと、来院の必要な患者さんが多いので、なかなか実施できずにいます。

院内の血友病診療体制には何か特徴がありますか。

小関先生小児科と血液内科があるので、患者さんが大人になっても継続して診ることができます。整形外科や口腔外科といった外科系の先生とも連携は取りやすいです。新規に製剤の輸注を開始する時には石原先生に薬の説明や、レジストリ(患者さんのデータ登録)の説明、入力作業などをしていただいています。治験や臨床研究も含め、体制としてはしっかりしていると思います。

他科との連携がよくとれているということですね。

松本先生私は手術が必要な患者さんの止血コントロールを依頼されることが多く、交通外傷を負った患者さんが運ばれた際に救急科と連携して治療することもあります。救急や脳神経外科などで、手術が必要な時にも対応しています。他の科で後天性血友病(※)患者さんも全部診ています。

※ 後天性血友病とは、何らかの自己免疫学的機序により、後天的に血液凝固第Ⅷ(IX)因子に対する自己抗体ができ、止血が困難になる病態のこと。

小関先生小児科は、耳鼻咽喉科とか小児外科とか院内のいろいろな科にお願いすることが多いですね。血友病のような希少疾患だと、対応できませんと断られてしまう病院もあると思いますが、当院の各科では積極的に対応してくださるのでとてもやりやすいですね。

後進の育成で持続的な診療を

血友病診療のスタッフ体制と育成はどのように取り組まれていますか。

小関先生小児科は血液の専門医が3人いて、若手も含め5人で診療を行っています。若手の医師と勉強会に行き、積極的に発表してもらうようにしています。外来は私が担当することが多いのですが、他の医師にも一緒に診てもらうことでより育成につながると思います。

松本先生後天性血友病患者さんの場合、入院中は他の医師も診ますが、外来では私が診ています。触れる機会を作ったり研修医に凝固のレクチャーをしたりはしていますが、これからです。

石原先生薬剤部では、血液疾患という点では興味を持っている薬剤師もいますが、実際には腫瘍領域に関心が向いている場合が多いのが現状です。血友病については症例数が限られているため、知識の維持・向上を目的に定期的に勉強会を実施しています。また、患者さんが入院された際には、担当薬剤師を中心に対応する体制をとり、若手薬剤師の育成にもつなげています。

自己注射の指導はどうされていますか。

小関先生今は皮下注射の製剤があるので、静脈の自己注射をする機会が減っています。以前は小学校高学年から中学生ぐらいの時に、模型で練習していました。開始の年齢はさまざまです。

製剤の選択はどうされていますか。

松本先生小児科から移ってきた患者さんは、慣れた製剤をそのまま使用していて変更を希望されないことが多いです。静脈から皮下注射に変えた方が、静脈注射に戻ることは少ないです。ただ静脈注射も自分で打てるので、いざという時は自ら静脈注射製剤を打っています。それぞれの患者さんのライフスタイルに合った形で製剤選択をされています。

小関先生安定している患者さんは、製剤を変えたがらないことが多いですね。小児期は皮下注射の製剤が使いやすいため、どうしてもそちらの選択になります。今は多くの薬剤が市販されており、少しずつ選択が変わってきていると思います。

石原先生薬剤師は、在庫管理や自己注射指導、製剤切り替え時の説明などを主体的に担っています。医師が診断や治療方針の決定に専念できるよう、診療を支える体制の整備に取り組んでいます。

後天性血友病の診療についてお話をお聞かせください。

松本先生徐々に認知度が高まってきて、整形外科、皮膚科等で症状や血液検査の結果から出血傾向が疑われると、すぐ相談がくるようになりました。その中で、後天性血友病であった場合には私が治療方針を固めて、若手と一緒に診ています。

保因者に関する診療はいかがですか。

小関先生保因者に対する考え方が最近変化してきており、出産の対応や遺伝学的診断などの依頼を受けることが増えてきました。保因者診療はナイーブで難しい面が多いので、パンフレットを用いてわかりやすく説明するように心がけています。

血友病以外の先天性血液凝固異常症、例えばフォン・ヴィレブランド病などを診られることはありますか。

小関先生軽症なので、1年に1回の受診のみの方が多いです。中には出血を繰り返したり、生理時に補充が必要な方もおられるため、小児期から定期診察の必要性を説明しています。

松本先生過多月経などで紹介があって調べたりします。他院の血栓止血外来に診療に行った際、軽症の方を診ていますが、そんなに出血で困っている方はいらっしゃらないです。その他に第Ⅶ因子欠乏症やフィブリノゲン異常症等まれな疾患の患者さんも定期的に診ています。

今後目指していきたい診療体制についてお聞かせください。

小関先生診療科同士の連携が取れており、困ったことがあれば相談しやすい環境にはなっていますが、医師の異動もあります。医師が変わっても同じ診療レベルを維持できるように血友病に関心を持ってくれる医師が増えてほしいと思っています。他院で困ったときに、当院を頼ってもらえるように、長期的にいろいろな医師が興味を持って関われる環境を作っていかなければならないと思っています。

松本先生血液内科も同じですね。後進を育てなくてはいけません。あとは、院外の患者さんを紹介してもらえるような体制はしっかり構築したいと思います。現在進行中のレジストリがいい機会ですので、共有していきたいですね。

(2026年2月記)
審J2603276

左から松本 拓郎先生、小関 道夫先生、石原 正志先生​
左から松本 拓郎先生、小関 道夫先生、石原 正志先生​
岐阜大学 医学部附属病院
所在地
〒501-1194
岐阜県岐阜市柳戸1-1
TEL::058-230-6000(代表)
https://www.hosp.gifu-u.ac.jp/

奈良県立医科大学名誉教授・前学長 吉岡 章先生からひとこと

岐阜大学の血友病診療体制の特徴は、小児科と血液内科の連携に加えて、薬剤部が石原先生を中心に強力に関わってくださっている点です。血友病診療における「医薬分業」のモデルケースとも言えます。決して「分業」ではなく、きめ細かい「協働」が見事です。