どんな治療?

治療は薬物療法が中心です。患者さんごとに最良の治療法が異なるため、主治医の指示通りに規則正しく薬物治療を続けることが大事です。薬物治療による効果がみられた後には、筋力を回復させるためのリハビリテーションも行います。

ステロイド

副腎皮質から分泌されるホルモンを人工的に合成したお薬です。炎症や免疫機能を抑える作用をもち、多発性筋炎・皮膚筋炎の治療の中心となります。

  • 最初は治療効果を重視して多めに投与します。
  • 治療効果が出てきたら徐々に量を減らしていきます。急に減量すると症状が再びあらわれること(再燃と言います)があります。 ステロイド量を徐々に少なくする
  • 皮膚症状だけの場合には、ステロイド軟膏などが優先的に使われます。 ステロイド
  • 重症の場合には、大量のステロイドを3日間点滴する「ステロイドパルス療法」を行うことがあります。強力に炎症を抑制する効果が知られています。
  • ステロイドは有効な薬ですが、多量に、かつ長期間服用しているとさまざまな副作用をおこすこともあります。
    主治医の先生は、副作用である次のような症状や病気がなるべく出てこないようにステロイド量を調節します。

主な副作用免疫力低下(感染症にかかりやすくなる)・糖尿病・胃かいよう・精神変調・血栓症・筋萎縮(ステロイド筋症)・白内障・緑内障・骨粗しょう症・食欲亢進・肥満など

質問する女性

CK値が正常範囲にまで下がっても筋力が回復しないのですが…?CK:クレアチンキナーゼ(どんな検査?参照)

医師の回答

CK値が正常でも、他の検査値に異常があれば、筋炎は落ち着いていないと考えられます。一方、中程度以上の量のステロイドを長期服用している患者さんでは、ステロイド筋症の可能性もあります。各種検査データが正常で、ステロイド量が少ないにもかかわらず、筋力が回復しない患者さんは、積極的にリハビリによる筋力トレーニングを行うことが勧められます。

免疫抑制薬

免疫機能を抑えるお薬です。
ステロイドだけでは治療効果が不十分と考えられる場合、症状が再びあらわれた場合などに使います。ステロイドの副作用が懸念される場合には、ステロイドの量を減らして併用することもあります。進行が速い間質性肺炎を合併している場合には、最初から十分量のステロイドと同時に使用します。

ステロイドによる治療は9割以上の患者さんで一定の効果を示し、多くの患者さんが日常生活に復帰します。約4割の患者さんで免疫抑制薬も併用されています。

掃除機をかける女性

免疫グロブリン製剤

免疫を調節するお薬です。
ステロイドを含む治療で効果が不十分な場合に、5日間点滴します。
筋力の低下が著しい場合、飲み込みにくい、会話がしにくいなどの症状がある場合、一度症状がおさまった患者さんで、再び症状があらわれた場合などに選択されます。

※のどの筋の炎症により生じる症状です。食べ物が誤って気管に入ってしまう危険があり、最悪の場合窒息につながります。そのため、治療を急ぐ必要があります。

免疫グロブリン製剤とは

免疫グロブリンは、血液中に含まれるたんぱく質の一種で、免疫反応の主役です。この免疫グロブリンを人の血液から抽出・精製して作られたのが免疫グロブリン製剤です。

  • 血液由来のウイルス感染などの可能性はゼロにはなりません。
  • 製造する過程でウイルスを不活化するための加熱処理やウイルスを取り除く膜処理などを行っています。
  • 献血ヴェノグロブリンIHは発売から現在までにこのお薬が原因と断定されたウイルス感染は確認されていません(2019年10月現在)。