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専門とする教授がいます。しかし、薬剤師の場合、集中治療に特化した教授はなかなかいませんから、野﨑先生や安藝先生は講師として教える立場にも立っています。野﨑先生しかし、1つの領域として専門性を高めていくためには、認定制度は大切ですね。入江先生そうですね。集中治療領域では、2011年度から日本臨床救急医学会が救急・集中治療を対象とした救急認定薬剤師の認定制度を行っていて、207名(2018年12月現在)の薬剤師が認定されています。そこで、薬剤師のあり方委員会は2019年1月に臨床救急医学会救急認定薬剤師認定委員会と合同会議を行って、集中治療領域の研修について協力させていただくことになりました。具体的には、集中治療医学会の全国の支部学術集会への参加が救急認定薬剤師の認定単位となります。そして、各支部会に対しては、集中治療に関わる薬剤師の教育体制の整備として教育セミナーの開催をお願いしました。すでに昨年からいくつかの支部で開催していますが、今後、他の支部にも拡がっていくことと思います。学会同士が協力し、一人でも多くの薬剤師がICUで専門性を発揮できるようにしたいという考えです。野﨑先生もう1つ、今後、ICUの薬剤師配置の定着を目指して教育とともに取り組むべき課題が、エビデンスとなるデータを出していくことです。安藝先生確かに欧米では多くのデータが出ていますが、日本ではまだ少ない。ICUといっても病院によってそれぞれ規模が違うことや、業務が標準化されていないことがデータとしてまとめにくいという理由だと思います。今後、ポジションペーパーの策定を通して業務の標準化を進め、より多くの施設を集めてデータを出していく必要があります。入江先生臨床研究は教育施設ではない一民間病院では難しいので、やはりこれについても大学病院が中心となってプロトコルを作り、全国に広げていければ理想的です。安藝先生ネットワークの充実が基盤となると思いますが、今後、私たち大学病院が取り組むべき課題だと思います。野﨑先生ICUで活躍する薬剤師を増やしていくには、まだいろいろな課題があります。しかし、ICUには薬剤師にしかできない業務がたくさんあります。私がいつも感じるのが、医師は治療を優先させるので足し算が得意ですが、副作用が重大だと知っている薬剤師は、引き算で考えることができるということです。もちろん足していかないと治るものも治らないのですが、それによる有害事象や合併症など、薬剤的な影響がどれだけあるかを見極めるのが薬剤師。医師とは違う観点で患者さんの変化をみることが、ICUの難しさでもありやりがいでもあります。安藝先生まさにスキルミックスですよね。現場では多職種が常にディスカッションしていて、昨日と今日、朝と昼でどこが違うのか、患者さんをみて情報を集め、さらにその情報の中から異常なものを集めて解析している。これは、そういった教育を受けた私たち薬剤師が得意なVol.32ファーマシストビュー2020.2集中治療室への薬剤師の常駐配置を目指してはずです。現場の日々の積み重ねによって得られた総合的に判断する経験と力こそが、人の命を救うのだと痛感しています。入江先生急性期の患者さんがICUを出られなければ一般病棟にも行けませんし、ましてや退院は無理でしょう。一番状態の悪い患者さんのそばに薬剤師がいなくてどうするのだ、と力説したいですね。野﨑先生その通りです。私たちは現場を体験しているので、薬剤師がいないICUなど考えられない。これだけやることがあるのに、なぜみんなここに来ないのかという気持ちです。たくさんの情報をどう組み合わせて解析していくか、その謎解きが患者さんの命につながるのですから、これほど薬剤師冥利につきる仕事はありません。このやりがいを多くの薬剤師に知ってほしいですね。安藝先生そのためにも、ICUで仕事をしたいと考える薬剤師をバックアップする環境整備を早く進めなければなりません。私はこの3人の中では一番年下で経験も浅かったのですが、迷ったときには先生方にいろいろと教えてもらうことができました。それぞれの薬剤部で、または全国の薬剤師でサポート体制やシステムを整え、誰でも当たり前に薬物療法の支援が行えるようになれば、若手の薬剤師もICUに行くことが怖くないと思います。入江先生どのICUにも医師や看護師がいるのと同じように、薬剤師がいるのが当たり前―その環境を実現させるという目標は、私たちが初めて出会ったときから変わってはいません。まだ時間はかかりますが、その実現に向け、全国のICUに携わる薬剤師の先生方とともに、これからも努力していきましょう。6


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