pharmacistview.vol32


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図4■小倉記念病院の集中治療室での薬剤師の活動状況(2016.11〜2017.1n=308)●ICUでの薬学的支援その他2%看護師に対するもの34%医師に対するもの64%処方設計TDM投与方法副作用処方提案配合変化薬物動態相互作用粉砕可否併用禁忌その他020406080100(件)師の配置が医療の質だけではなく、経営にも貢献することは海外の文献でもデータが出されていましたが、最近は日本でも報告されるようになってきました。入江先生私もICUではさまざまな重篤な副作用に遭遇し、忘れられない症例もあります。たとえば、ある患者さんが急変し、吐き気などを訴えた後に意識障害が発現してICUに入室になりました。薬歴を確認すると、抗血小板剤である塩酸チクロピジン製剤を1ヵ月前から内服しています。発生頻度は非常に低いとは言え、もしやと副作用による血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)を想定して血液検査データを調べたところ、血小板が減少していたのです。すぐに主治医と血液内科の医師に連絡をして速やかに血漿交換を行い、無事回復に至りました。数時間対応が遅かったら、命に関わっていた症例です。薬剤師はいつもそこにいて、薬の副作用に気づくことが重要だと痛感しています。野﨑先生大事なことは、こういったケースを入江先生が知識からではなく経験として知っているということだと思います。いくらこのケースのように発生頻度自体は低い副作用でも、1回でも経験すれば次も必ず確認するようになります。医師もそういった経験を非常に重視して治療に活かしているのですが、薬剤師にはそういう“経験する”という部分が不足している。ベッドサイドに行って、自分の肌身で感じながらやっていくことが大事なのです。安藝先生薬剤師は添付文書の情報や数値で考えてしまいがちですが、複合疾患もあって脆弱な容態であるICUの患者さんは、そもそも添付文書の中の数値の母集団とはまったく違う状態です。です5●医師からの問い合わせの例CHDF施行中のIPM/CS投与について(透析性について)シベンゾリンの蓄積、副作用について低Na血症に対する対処について(輸液投与の相談)代謝性アルカローシスの原因について(何か薬剤が関与していないか)薬剤性の血小板減少について(薬歴から疑わしい薬剤がないか見てほしい)Focus不明の感染症状について(抗菌薬を一旦中止してみようか)人工血管感染に対する抗菌薬選択(内服薬で移行性のいい薬剤を投与したい)n=60■薬剤投与前■薬剤投与後●看護師からの問い合わせのタイミング副作用の説明薬剤の説明薬理作用の説明薬物動態の説明透析性の説明感染対策の説明粉砕可否の説明その他024681012141618(件)(入江先生ご提供資料より作成)から、記載されたことだけではなく、自分の経験を振り返って異常はないか、原因は何かを考えることが大切になるわけですね。今後の課題は教育体制の構築と臨床データの創出認定制度では学会間の協力がスタート実際に常駐して必要性を日々痛感しているからこそ、ICUで働く薬剤師を増やしていかなければと考える3人の先生方。最後に、ICUへの薬剤師配置の定着を進める上での今後の課題についてお話しいただきました。野﨑先生今後の課題というと、まず教育が挙がるのではないでしょうか。小倉記念病院ではICUとCCUに若手を1年交代で配置されているそうですね。やはりそれは育成を考えた体制ですか。入江先生そうです。最初はわからなくてもいいから、とにかくここにいる。わからないことが出てきたら、聞きにいって理解する」というスタンスで若手に経験させています。安藝先生当院でも若手薬剤師がICUに2〜3人ローテーションで配置されています。ただ、私たちの施設のようにICUを経験した先輩薬剤師がいる病院ではOJTを行いながら教育ができますが、そういう薬剤師がいない病院ではできません。今後は、他領域の認定薬剤師制のように、研修施設に行って何ヵ月か研修を受けるような教育体制の整備が必要になるのではないでしょうか。入江先生大学病院を中心に研修ができるようになるとよいのですが、現状ではまだ難しいかもしれませんね。たとえば、医師の場合は集中治療も含めてすべての領域で


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