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Vol.32ファーマシストビュー2020.2集中治療室への薬剤師の常駐配置を目指して長崎大学病院薬剤部安藝敬生先生2004年九州大学大学院薬学府修士課程修了後、福岡徳洲会病院薬剤部勤務。2008年から2年間福岡大学薬学部助教を務め、2010年より長崎大学病院薬剤部。2013年救急・集中治療領域の研究で薬学博士取得。日本臨床救急医学会救急認定薬剤師、日本災害医学会災害医療認定薬剤師ほか。2017年より日本臨床救急医学会救急認定薬剤師認定委員会委員。2016年〜2018年日本集中治療医学会「集中治療における薬剤師のあり方検討委員会」委員を務める。利点ですよね。また、多種多様な容態の患者さんが集まっているICUでは、継続的に見ていないと、一人ひとりの容態の変化に応じた適切な処方提案ができません。行けるときに行ってカルテを見るというのではなく、患者さんの入室時からベッドサイドにいることは薬剤師にとっても必要な環境です。野﨑先生ルートについて言えば、薬剤師が介入する大きな役割のひとつが、ルートから起こる感染症を未然に防ぐことです。多様な注射剤が投与されルートが多くなるICUでは、いかにシンプルに整理してルートを減らしていくことができるかが、感染症の回避につながります。入江先生感染症の予防には医師ももっとも注意を払っていて、当院でもよく抗菌薬に関する問い合わせを受けています。野﨑先生感染症や副作用の回避は1日も早いICUからの退室につながりますから、ICUの回転率を上げて1人でも多くの患者さんを受け入れることは、病院の経営的観点からも重要です。薬剤4昨日と今日、朝と昼でどこが違うのか情報を抽出して解析する集中治療領域は薬剤師が得意な現場であるはずですとして具体的に示し、現場の指針として認知してもらうよい機会になると思っています。安藝先生私が当初そうだったように、特に若手の薬剤師はやろうとしている業務を行ってもいいのか、正しいかどうかが判断できず躊躇する場面があると思います。そのような場合にやるべき業務から乖離してしまわないよう、ポジションペーパーには薬剤師の背中を押す役割もあります。最近は学会に行くと、ポジションペーパーはいつできるのか。それがあると非常に心強い」という言葉を聞くようになりました。ICU業務へのやる気とポジションペーパーへの期待を感じています。入江先生ポジションペーパーは、学術誌投稿の準備をしているところです。先ほど申し上げたように、今回はまず薬剤師業務の標準化を目的としたので、委員会の策定案には集中治療に特化した業務はあまり盛り込んではいません。2019年3月に募った策定案に対するパブリックコメントでは、「人工呼吸器や鎮静について専門的な理解を深める必要があると記載してはどうか」というご意見もいただきました。それはとても重要な業務なのですが、現状でその業務を行えるのはICUにいる薬剤師のほんの一部というのが実情ですから、最初からあまりハードルを高くしようとは考えていません。まずは、薬剤師が集中治療の現場にいて、すべての薬剤師が標準的な役割を果たしているという状況を実現することが先決です。もちろん、今後は業務の進展や変化に応じてポジションペーパーをブラッシュアップし、より質の高い業務の標準化を目指すものになります。刻一刻と容態が変わるICUでは添付文書の情報だけではなく経験値が薬物療法の安全性を高めるでは、3人の先生方のように早くから病棟に常駐する薬剤師は、実際にはどういった業務を行い、どのように質の高い集中治療に貢献しているのでしょうか。入江先生に小倉記念病院での業務について紹介していただきながら、薬剤師が集中治療室にいる利点についてそれぞれの考えをお話しいただきました。入江先生当院のICUでの薬剤師による薬学的支援について調べたところ、約6割が医師へ、約3割が看護師へのものでした(次頁・図4)。支援内容は、処方設計がもっとも多くなっています。また、薬剤師の常駐前は、看護師からの問い合わせはどうしても業務を行ってからになりがちでしたが、今は、業務を行う前に、常駐している薬剤師をつかまえて確認するのが日常になっています。たとえば常駐前は、薬を混ぜると混濁した」と配合後の問い合わせが多かったのですが、今は配合する前にルート確認が行われているといった具合です。安藝先生その場で問い合わせができるのは、安全管理上でも常駐配置の大きな


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