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薬剤師には〝経験〟が不足している集中治療室でもベッドサイドに行って肌身で感じながらやることが大事です社会福祉法人京都社会事業財団京都桂病院医務部薬剤科係長経営企画室兼務野﨑歩先生2001年岐阜薬科大学修士課程修了後、京都桂病院薬剤科勤務。2012年より薬剤科係長。2018年から経営企画室兼務。2011年より京都薬科大学非常勤講師。日本医療薬学会認定薬剤師、日本静脈経腸栄養学会NST専門療法士ほか。2009年より日本静脈経腸栄養学会近畿支部評議員。2014年JSEPTIC(日本集中治療教育研究会)薬剤師部会コアメンバー。2016年〜2018年日本集中治療医学会「集中治療における薬剤師のあり方検討委員会」委員を務める。を示す業務指針書、いわゆる“ポジションペーパー”をまとめる必要があります。そこで、薬剤師のあり方委員会では、集中治療室における薬剤師の活動指針」の策定に発足以来数年をかけて取り組んできました。入江先生今回、案を作成する際に米国のポジションペーパーを参考にしたのですが、米国ではこのポジションペーパーを集中治療医学会と臨床薬学会とが共同で策定しています。日本版のポジションペーパーも、日本集中治療医学会というこの領域の中心的な学会で作成している点、委員として参加している医師の視点も加わっている点が大きな特徴です。しかし、施設によって、ICUの規模も患者さんの疾患もそれぞれ違うという日本の実情も考えなければなりません。そこで、初版である今回は、これは、マンパワーが十分ではない状況で病棟配置をやりくりすると、ICUの優先順位は低くなるということです。本当は、もっとも重症度の高い患者さんがいるICUにこそ、最初に薬剤師を配置してほしいと思いませんか。薬剤師配置が以前よりは進んではいても、必要性が浸透しているとは言えないのかもしれません。野﨑先生薬剤師が少ない中で1人でも多くの入院患者さんに対応したいということから、単純に一般病棟に比べてベッド数が少ないためにICUが後回しになってしまうということもあるのかもしれませんね。また、マンパワーが増えないのは、病棟薬剤業務実施加算の新設以来、薬剤師の業務に特定した評価がほとんどなく、薬剤師の増員に直結しないこともあるのだと思います。医科の点数が上がったのであれば、病院としては医師を増やしたいと考えるのでしょう。病棟薬剤業務実施加算の新設直後は薬剤師が増えた病院が多いと思いますが、落ち着いてきた今は当院でも薬剤師の増員は簡単ではありません。安藝先生しかし、もしマンパワーが解決されてICUに配置されても、具体的に何をすればよいのかがわからないという薬剤師も多いのではないでしょうか。やるべきことが周知されていないままだと、病院ごとに業務に幅が生まれてしまう状況はこれまでと変わりませんよね。業務の標準化を進めるためには、ICUでの薬剤師の活動内容や目的など図3■「集中治療室における薬剤師の活動指針」について現状各医療機関の機能や運営体制、人員配置は多彩で業務内容は試行錯誤「集中治療室における薬剤師の活動指針」目的目標集中治療室における薬剤師業務の標準化薬剤師がチーム医療の一員として集中治療患者管理に貢献できる●活動指針の構成(案)1.2.3.治療、薬物療法薬物に関する副作用への対応インフォームドコンセント(説明と同意)4.5.6.7.8.9.10.11.記録品質管理感染管理チーム医療資格教育研究その他まず基本的な活動指針の確立を目的とし、薬剤師業務の標準化と患者管理への貢献を目指しました。ICUで行っている業務は一般病棟とほぼ変わらないことや、薬剤師が取り組むべき多くの仕事があることなど、基本的な役割が理解されるものにしたいと考えています。野﨑先生病棟薬剤業務実施加算2が新設されたときも、週に20時間以上という要件などははっきりしていても、業務内容についてはあまり明確ではありませんでした。ポジションペーパーの策定は、ICUで薬物療法に貢献するにはどういう業務を行うのかを公のものただし、活動指針は業務上の必須事項ではない(入江先生ご提供資料より作成)3


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