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Vol.32ファーマシストビュー2020.2集中治療室への薬剤師の常駐配置を目指して一般財団法人平成紫川会小倉記念病院薬剤部部長入江利行先生1987年神戸学院大学薬学部卒業後、小倉記念病院薬剤部勤務。2007年教育担当課長、2012年より薬剤部部長兼安全管理部医薬品安全担当課長。2013年より臨床研究センター副センター長を兼務。日本医療薬学会認定薬剤師、日本病院薬剤師会感染制御専門薬剤師ほか。2016年より日本集中治療医学会「集中治療における薬剤師のあり方検討委員会」委員、2019年より委員長を務める。2018年より同学会評議員、2019年より九州支部運営委員会委員。安藝先生診療報酬点数上での評価もあって、ICUへの薬剤師の関与は少しずつ増えています。しかし、残念ながらまだまだ十分ではないと私は感じていますが、どう思われますか。入江先生それは実際に数字を見てもわかります。日本病院薬剤師会が毎年行っている「病院薬剤部門の現状調査」の集計結果報告の一部を、2015年度から3年間分グラフにまとめてみました(図2)。薬剤師の関与は増えてはいても専従はほとんど増えてはおらず、兼務が半数以上です。高度な薬物療法が行われ、なおかつ病態が刻々と変化するICUには常駐が望ましいのですが、このように専従配置が進まない大きな理由には、そもそも病院薬剤師自体が足りていないという背景があります。実際に、この調査で「薬剤師がICU関連業務に関与していない理由」を尋ねたところ、複数回答とはいえ、業務量に見合った薬剤師が配置されていないため」と答えた施設がそれぞれの年で7割以上でした。しかし2私たちはそんな現場を目指してきました医師や看護師がいるのが当然のように集中治療室には薬剤師がいる活動に非常に期待してくださって、学会内での薬剤師の委員会の発足に協力してくれることになりました。そうして翌年の2016年、集中治療における薬剤師活動の確立の検討や、教育を行う組織として立ち上がったのが「集中治療における薬剤師のあり方検討委員会」です。スタートとなるこの年は、薬剤師7名に加え、理事の医師2名が委員になりました。そして、そのうちの1名である志馬伸朗先生(広島大学大学院医系科学研究科救急集中治療医学)が委員長を、さらに、理事長が直々に担当理事を務めてくれました。私自身、チーム医療の一員としてICUで活動している限りは、薬剤師だけが所属する学会ではなく多職種がいる学会で認められたいと考えてきましたから、集中治療医学会で薬剤師の委員会が発足したことは大変意義のあることだと考えています。野﨑先生ちょうど2016年度の診療報酬改定で、それまで病棟薬剤業務実施加算の努力義務に留まっていたICUへの薬剤師の配置が新たに評価されたことも、活動の後押しになりました。私たち3人は委員として立ち上げに携わらせていただきましたが、私と安藝先生は2018年度までで委員をいったん退きました。2019年度からは入江先生が志馬先生からバトンを引き継いで委員長を務め、9名の委員が活発な活動を行っています(図1)。ICUでの業務の標準化を目指し薬剤師のあり方委員会が策定を進める日本版ポジションペーパー集中治療領域での薬剤師の関与が、徐々に注目されてきていることを実感している3人の先生方。ここでは現在の配置状況や背景を見直し、薬剤師のあり方委員会で取り組んできた“ポジションペーパー”についてもご紹介いただいています。図2■薬剤師のICU関連業務への関与●ICU等がある施設のうち薬剤師が関与している割合●薬剤師の関与について日本病院薬剤師会2015年度、2016年度、2017年度の「病院薬剤部門の現状調査」集計結果報告より2015年2016年2017年59.7%(673)n=112861.6%(668)n=108566.1%(748)n=11328814410592■専従■専任■兼務4321953612394080100200300400500(件)(入江先生ご提供資料より作成)