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集中治療に携わる薬剤師を増やしたいと2009年をスタートラインに熱い思いの仲間が集まり活動を開始集中治療に携わる薬剤師がまだごく少数であった頃から、いわば草分け的存在の1人として独自に活動を行っていた入江先生、野﨑先生、安藝先生。最初に、それぞれが集中治療室(以降、「ICU」)に常駐を始めた頃から、集中治療医学会での「集中治療における薬剤師のあり方検討委員会(以降、薬剤師のあり方委員会」)」設立に至るまでを振り返っていただきました。入江先生野﨑先生、安藝先生とは、2009年の「第6回九州山口薬学会ファーマシューティカルケアシンポジウム」で初めてお会いしました。2008年度の診療報酬改定で薬剤管理指導料が3区分になり、救命救急入院料や特定集中治療室管理料などで汎用されるハイリスク薬の管理指導に高い点数がついたこともあって、薬剤師の活動が注目され始めていたところでした。救急・集中医療における薬剤師の関わり」というシンポジウムでそれぞれがシンポジストの一員だったのですが、九州・山口地区の学会とはいえ、京都桂病院(京都市西京区:585床)が先駆的に活動されていたので、野﨑先生に参加の依頼があったのだと思います。野﨑先生ICUで活動している薬剤師はまだ珍しい時代だったので、シンポジウムで先生方と出会い、こんなに熱心に活動している薬剤師がほかにもいると知って嬉しかったですね。当院のICUは10床で、その頃私は常駐してちょうど10年目ぐらいでした。当時から、安藝先生も入江先生も兼任ではなく常駐されていたと記憶しています。安藝先生はい。私は初めてお会いした頃は民間病院に所属しており、2005年からICUに常駐していました。2010年に長崎大学病院(長崎市:874床)に移り、チーム医療の一員として、20床あるICUで現在も活動しています。確か入江先生は野﨑先生と同じぐらい早い時期から常駐されていましたよね。入江先生私のいる小倉記念病院(福岡県北九州市:656床)では、2000年にCCUを8床から20床に増床したことをきっかけに多職種が配置され、私もICU・CCU計40床で2012年まで常駐業務を行いました。しかし、当時は集中治療領域に薬剤師のネットワークがなかったので、先生方に会うまでは業務について相談する術がありませんでした。安藝先生あの頃は、どの施設で何を行っているか、どこまで行えばよいかなど、集中治療領域での薬剤師の活動を俯瞰的に評価するための情報がほとんど出ていなかったので、何をどう行うかはそれぞれで判断せざるを得ませんでした。そのため、薬剤の管理だけを行っている病院も1あれば、わずかとは言え、入江先生や野﨑先生のように薬剤師が一人ひとりの患者さんの薬物療法に関わっている病院もあるなど、業務内容には大きな幅がありました。野﨑先生私も最初は何から手をつけてよいのかがわからず、手探りでしたね。結局、医師の横について、一緒に患者さんの容態をみることから始めました。他職種の業務も含めて集中治療そのものを現場で学び、当院のICUの患者像から果たすべき役割を自分なりに構築していきました。安藝先生私も現場に行くうちにやるべきことが見えてきたのですが、その一方でどこまでやっていいのだろうかという迷いがありました。当時の病棟業務は服薬指導が中心だったからです。そんな中で先生方の活動を聞いて、やはりそこまでやっていいんだ、いや、やらなければいけないんだ」と分かり、とても心強かった。入江先生3人とも横のつながりがまったくなかったところに出会ったので、初対面にも関わらず、すぐに「これからどうやって集中治療領域の薬剤師を増やしていこうか」とか「何か行動を起こしたいね」と、熱く語り合ったことをよく覚えています。それからはそれぞれが主要な学会に参加してシンポジウムなどを行うようになったのですから、今思えば、あの出会いが私たちの活動のスタートラインだったわけです。野﨑先生私は入江先生に刺激されて、先生がすでに発表もされていた集中治療医学会に参加するようになりました。それから横のつながりが少しずつ伸びていき、2014年の集中治療医学会ではICUに携わる薬剤師が十数人集まりましたね。入江先生そこで何かできないかという話になり、ちょうどこの年に公募になった日本医療薬学会のシンポジウムに応募し、薬剤師だけではなく救急集中治療分野の専門医にもシンポジストに入っていただいて「集中治療症例ディスカッション」を行いました。すると、予想以上の人が集まって立ち見が三重になり、急遽、学会側がサテライト会場を3つも用意してくれたほどでした。集中治療領域での活動に関心が高まっていることが、ここで明確になったのです。翌年の「集中治療における多職種連携を考える」というシンポジウムも好評だったので、それ以来、毎年、医療薬学会でいろいろな薬剤師がICU業務をテーマにシンポジウムや発表を行うようになりました。安藝先生集中治療医学会で、薬剤師の委員会を作ろうと動きだしたのがこの頃でしたね。入江先生そうです。2015年当時の学会の理事長が、集中治療領域での薬剤師の図1■「集中治療における薬剤師のあり方検討委員会」の活動目標日本集中治療医学会「集中治療における薬剤師のあり方検討委員会」2019年の目標集中治療室における薬剤師業務を確立させ、本学会における薬剤師の参画を推進する●「集中治療室における薬剤師業務の指針(仮題)」をまとめ、公表、普及させる●薬剤師に対する教育、啓発活動をすすめる●救急認定薬剤師制度への支援を進める●集中治療室における薬剤使用について、調査/研究をおこなう(日本集中治療医学会ホームページより作成)