pharmacistview.vol31


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就任後すぐにレジデント制度を整備大学院の助教がプログラムづくりに携わり“考えさせる”仕掛けも組み込む―レジデント制度について教えてください。石井先生私が薬剤部長に就いてまず考えたのが、卒後教育をどう行っていくかということでした。すぐれた薬剤師を育てて増やしていかなければ、薬剤部として成り立ちません。就任した2012年は最初の6年制卒の薬剤師が活動を始めた変化の年でしたから、全国でもまだ少なかったレジデント制度を導入しようと考え、すぐに病院長に掛け合って、翌年の開始を目指して整備を進めました。幸い1年目から3名の優秀なレジデントを迎えることができ、よいスタートをきることができたと思います。当院のレジデントプログラムでは、業務」教育」「研究」の3つにおける到達目標を掲げ、2年間にわたる研修を行っています(下図)。特に「教育」では学問として薬剤師業務を整理する力を、研究」では基礎薬学の知識と研究を臨床に応用する力を伸ばしていきます。レジデントプログラムの運営には、薬学研究院の助教である内田雅士と石川雅之に加え多くの薬剤師が携わっています。2人は大学で授業を行ったり研究室の学生の研究をみながら、薬剤部を兼務してプログラムづくりとレジンデントの指導を担っています。また、当薬剤部では常に薬学生が実習を行っているのですが、2人は実習生の指導もメインとなって担当しています。―内田先生と石川先生は、どのようにレジデントプログラムの作成を行っているのですか。内田先生その年のプログラムが半年経過した頃には、現場の薬剤師やレジデントにアンケートをとり、その意見を参考に次の年のプログラムの準備を開始します。レジデント制度を導入している施設はまだそれほど多くはないので、お互いを参考にしながら自施設に合ったプログラムを組んでいて、私たちも毎年内容を見直してバージョンアップさせています。プログラムづくりに携わっていると、そのときの薬剤師業務の問題点が見え、今■千葉大学医学部附属病院のレジデントプログラムの概要レジデントは2年間で67講義を受けながら、1年目は中央業務を、2年目には病棟業務を中心に学ぶ。これまでの6年で23名の研修が修了し、現在は6期生7名、7期生5名が研修を行っている(2019年10月現在)。…妊婦授乳婦がん感染救急糖尿病…認定・専門薬剤師などGeneralPharmacistレジデントプログラム薬剤師の使命と役割を自覚し、医療人に相応しい倫理観と基本的な知識および技能を身につける。薬の専門家として自立し、生涯にわたり自律的に成長するための礎とする。業務到達目標教育研究業務の内容とその目的を理解し、責任を持って日常の薬剤業務を適切に遂行できる。他の職員と協調し、最適な薬物治療の提供に寄与できる。自己研鑽に励み、知識・技能・経験を整理し、後進に伝えることができる。日々の業務から問題点を抽出し、解決策を立案して行動することができる。教育目標病院薬剤師が担う使命とその魅力を伝え、個々の積極性を促して将来の医療の発展に資する人材を育成する。(石井先生ご提供資料より作成)後の課題が浮き彫りになってきます。そこで、レジデントにも“2年間の研修から業務の改善策を提案せよ”という課題を与えています。問題意識を持って業務を行っていないと、レジデントプログラムの最終発表会で提案することができません。つまり、レジデントが毎日考えなければならない仕掛けになっているのです。石井先生問題点を抽出して解決策を考えるという作業は、生活習慣です。業務を覚えてこなすことが目的の毎日にならないよう、すべてのレジデントにとって、この2年間は業務をよく見て疑問を持つ習慣を身につける時間です。最終発表会で良い提案があればすぐに採用していますが、中には「なるほど、よく見ているな」と私たちを唸らせる提案もあり、業務改善にも大いに貢献してくれています。―2人はレジデントや実習生の指導も行っているのですね。石川先生はい。私は当院のレジデント1期生なのですが、最初はマルチタスクを迅速かつ正確にこなす難しさや、大学で覚えたことだけでは通用しないことに愕然としました。見ていると、とにかく採用薬や業務を覚えなければと頭がいっぱいになっているレジデントもいます。


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