pharmacistview.vol31


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―最初に、大学病院が担う薬剤師の育成について石井先生の考えをお聞かせください。石井先生大学は学校教育において、そして大学病院は治療においてもっとも高い水準に位置するところです。その水準を維持するには、双方の根幹となる教育、研究、臨床を切り離して考えることはできません。薬剤師の仕事も、大学教育で得た基礎薬学の知識と研究のスキルを臨床の場で活かすことができて初めて、高い専門性を持つ多職種と協働して高度な医療に携わることができるのだと思います。また、大学は教育や研究によって「学問」を究めるところですが、薬剤師も臨床業務を論文などで文字に落とし、学問」として構築していかなければ、知識を継承していくことも他職種に薬学的な意見を伝えることも難しいのではないでしょうか。たとえば、医療の現場で新たなアプローチが必要になった場合、多様な専門性や考え方を持つ人々がコラボレーションしなければ、突破口を見出すことができません。そのような場面で科学的な意見を正しく伝える術としても、薬剤師は薬学という学問を常に念頭に置いて業務を行う必要があります。だからと言って、頭の中に詰め込んだ学問上の知識だけを頼って行うのが薬剤師の仕事ではありません。多様な病態の患者さんを前に薬剤師の職能を発揮するためには、基礎薬学や研究のスキルを武器に自分で考える能力が不可欠です。こういった考えは私自身が経験から得たものです。私は卒業後すぐに生化学研究室の教務職員になったのですが、最初に教授から「興味のある研究国立大学法人千葉大学医学部附属病院所在地/〒260-8677千葉市中央区亥鼻1-8-1病床数/850床薬剤師/63名国立大学法人千葉大学医学部附属病院教授薬剤部長石井伊都子先生テーマを自分で見つけなさい」と指導を受けました。テーマを捜すうちに、薬学部の研究にはもっと臨床を意識する眼が必要だということや、創薬に必要なセルバイオロジーの研究が当時の千葉大学薬学部に欠けていることに気付き、薬物治療を主流とする代謝内科医にお願いして一緒に研究を始めました。また、留学先の米国のNIH※では、研究室同士が専門性を融合し、高い成果を挙げることを学びました。常に問題意識を持ってその解決策を導き出すこと、そして違った視点を持つ人と協働することは私自身のベースであり、私が考える薬剤師像にもつながっています。特に若い薬剤師は、まず日々の業務の中で「これでいいのか」と考える習慣を身につけてほしいと思います。一方、教育を行う側が基礎薬学、研究、臨床を縦割りで教えていては、それらを応用する思考は身につきません。当院は大学病院として、大学と連携しながら臨床に基礎薬学と研究を応用できる教育体制の構築を目指しています。※NIH=NationalInstitutesofHealth千葉大学医学部附属病院(千葉市中央区)の薬剤部長であり、大学院薬学研究院医療薬学研究室教授を務める石井伊都子先生は、2012年の薬剤部長就任以来、教育、研究、臨床を基盤とした薬剤師教育の体制づくりに力を入れてきました。今回は大学病院として同院が目指す、“考える力”を持った薬剤師の育成について、石井先生と薬学研究院の助教の先生方からお話をお聞きしました。薬剤部長に聞く―大学病院が考える薬学教育基礎薬学と研究で得た問題抽出のスキルを臨床に活かす“考える力”を持った薬剤師の育成ファーマシストビュー


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