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地域医療を支えてきた大病院で、これまでにない事態からの早期回復を目指し、経営改善への取り組みが始まりました。最初のキーワードは“知る”─医師の意識変化を促した見える化の推進DPCデータから当時の状況を見ると、同院は胆管結石、胆管炎内視鏡手術、前立腺肥大症経尿道手術や頻脈に対するアブレーション手術などで全国トップレベルの実績を収めていました。また、移転によって患者数が減少したということもありません。「つまり、膨らんだ経費分を取り戻すには、これまでの運営そのものを抜本的に見直し、改善の成果を一つ一つ積み上げるしかない。ここさえ修正すれば解決するというような近道も、ウルトラCもない」――そう結論した酒井先生と清水先生は、“患者数を増やす”診療単価を上げる”“経費を節減する”という増収・増益に不可欠な3つをどのように達成するか、課題を洗い出し、それぞれへの到達ルートを探し始めます。課題の1つが、経営が安定した大病院には典型的な、縦割り体制の運営でした。経営改善には、病院全体の状況を共有して協力・連携することが不可欠だと判断した酒井先生は、病院全体の状況の“見える化”と情報発信に取り組みます。入院患者数の増加に向けては、診療科ごとの延べ入院患者数、新入院患者数、各病棟の稼働率の推移を毎日カレンダーのように一覧にし、週に1度「入院図1■総合病院土浦協同病院が取り組んだ経営改善患者チェックミーティング」を開いて各診療科の代表に提示。もちろん全診療科の状況が比較できるのですが、ミーティングではコメントは一切せず、数字の共有のみに留めました。酒井先生は、「評価は逆効果だとわかっていた。全体を“知る”ことで、自分の診療科がなすべきことがわかる。医師はその意図をすぐに理解し、他科の数字も追いながら患者数増加に向けて努力してくれた」と話します。“知らなかった状況を知る”ことで医師の行動が変わり、入院患者数は徐々に増えていきました。“知る”ことによってもっとも顕著に改善されたものが逆紹介率です。酒井先生と副院長たちが地域の医療機関を年間100施設以上訪問し、紹介率は60%を超えていました。しかし、逆紹介率がなかなか上がりません。逆紹介患者の増加が紹介患者数に直結することを上級医の会議で訴え続けても、現場の医師には伝わっていなかったのです。そこで酒井先生と清水先生は、医事課に対し、課長4名がチームとなって26診療科すべてのカンファレンスを訪れ、逆紹介の重要性について直接説明するよう指示。「歓迎はされないだろう」と覚悟していたそうですが、行ってみると、「知らなかった」「早く説明にきてほしかった」とどの診療科も非常に協力的だったそうです。人事異動の時期に再訪問して説明を繰り返したところ、紹介率・逆紹介率はコンスタントに増加。「現場に伝える努力をしていなかったことが問題だった。見える、知るの徹底で、意識と行動は大きく変わる」と考えた清水先生は、保険査3つの観点で進めた経営改善の数々。人間ドックの活性化では経鼻内視鏡やPET-CTの導入などで実績を伸ばし、年間を通じて受診者数が増加。また、経費の節減では事務長を中心に維持費を見直し経費を大幅に節減するなど、院内の細かな点まで改善を図りそれぞれを成果につなげることができた。fehuturetotphefirststeT


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