風の音~輝く星たち~

ソーシャルワーカーって?

病院のソーシャルワーカーは、患者さんやご家族の療養生活上の課題について支援する福祉専門職です。社会福祉士や精神保健福祉士の有資格者であることが多く、社会福祉の立場から医療費や生活費などの経済的なこと、心理的なこと、就学・就労のことなど、治療に伴う社会生活上の不安や悩みごとに対して相談援助を行っています。それぞれの患者さん・ご家族の状態や思い、制度やサービスの成り立ちや意味合いを理解したうえで、「その人らしい生活を送る」お手伝いをします。

<当院でのソーシャルワーカーの関わり>
当院では、血友病と診断された患者さんが初診で来られた時に、診療科からソーシャルワーカーに紹介があり、面談を実施しています。その際に医療費助成に関する制度(小児慢性特定疾病、先天性血液凝固因子障害等治療研究事業、特定疾病療養受療証等)の申請や手続き状況の確認、各種制度の案内、患者さんの生活状況の確認を行います。血友病は幼少期から長くお付き合いしていく慢性疾患ですので、疾患とともに様々なライフイベントを経験し、様々な不安や課題に直面することがあります。親御さんのもとを離れて生活を始めるとき、就職するときなど、その都度面談をさせていただきます。一定の年齢に達したときには、親御さんから患者さん自身へ制度の管理を移行していくために、改めて制度について知っていただく機会を設けるようにもしております。また、毎月多職種でミーティングを開催し、多職種で共同して支援を行っています。

<血友病患者さんの高齢化に伴って>
凝固因子製剤の進歩により、血友病患者さんが年を重ねていくことで新たな生活上の課題に直面することが増えてきました。今までは自分自身で自己注射ができていた患者さんが、他疾患の発症に伴い筋力低下や麻痺等で、自分自身で自己注射ができなくなるということがあります。また、転倒の頻度が高くなると、軽症で今までオンデマンド補充療法だった患者さんが、定期補充療法に移行することもあります。そのような場合に、訪問看護や介護保険制度などの活用の場面も増えています。半減期延長製剤にて、定期補充療法の注射回数も減らすことが可能になり訪問看護が利用しやすくなりました。介護保険制度のサービスの一部には先天性血液凝固因子障害等治療研究事業の利用で、自己負担額が軽減されるものがあります。また、サービス担当者の方々で、初めて血友病患者さんの対応をされる方がいらっしゃると思います。私自身も他の医療機関に勤務していた時は、血友病患者さんに出会う機会はなく、現在の職場に転職して初めて出会いました。血友病に携わる様々な方々に教えていただき、経験をさせていただいたことが今の相談援助に生かされています。

初めての対応で不安に思うことがありましたら、まずはかかりつけ医やソーシャルワーカーにご相談ください。

<その人らしい生活を送るために>
様々な制度やサービスがありますが、活用できる制度やサービスを可能な限り多く使うことが、必ずしも望ましいこととは限りません。時には、利用できる制度やサービスも使わないという選択をすることが「その人らしい生活を送る」ということを守ることになるかもしれません。どのような制度、サービスを活用していくことが、その人が「その人らしい生活を送る」ことができるのかを一緒に相談しませんか。生活と治療の両立の中で、不安や悩みごとがあれば、気軽にかかりつけ医やソーシャルワーカーにお声掛けください。

(2020年Vol.64春号)
審J2003362

箱崎 祐紀子 兵庫医科大学病院 医療社会福祉部 ソーシャルワーカー