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血漿たん白の分離精製(製造工程)
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たん白質は20種類のアミノ酸が高度に縮重合したものであり、構成しているアミノ酸の種類や配列等に基づいて高次機能が規制され、全体としての分子特性に大きな影響を与えています。

その上、血漿たん白の多くは糖鎖と結合した糖たん白質(glycoprotein)、脂質と結合したリポたん白質(lipoprotein)として存在しており、分子特性をさらに複雑なものにしています。

従って、たん白質の分画技術は、これらの分子特性と分子量、さらには形状等に基づいて、条件を様々に変化させ、たん白質を分離・精製する方法です。そのうち、工業的分画・精製法として広く利用されている方法を以下に紹介します。

1. エタノール分画法

現在、2,000〜10,000Lの血漿を出発原料とする工業規模の血漿たん白の分画法として、1940年代に米国のコーン博士らが開発した「コーンのエタノール分画法」が採用されています。

この方法は、血漿を種々の条件下、すなわち以下のコーンの5変数を巧みに変化させてたん白質の溶解度を変え、沈殿画分と上清画分に分け、様々なたん白質を分画する優れた分別沈殿法です。

① 水素イオン濃度(pH)
② イオン強度
③ エタノール濃度
④ たん白質濃度
⑤ 温度

エタノール分画法

エタノール分画工程

2. ポリエチレングリコール分画法

ポリエチレングリコール(PEG)は、水溶性合成高分子です。PEG はたん白質を沈殿させる性質を持っているので、これを利用してたん白質の分離を行います。

一般的に、分子量の大きいたん白質は低いPEG 濃度で沈殿し、分子量の小さいものは高いPEG 濃度でなければ沈殿しません。

ポリエチレングリコール分画工程

ポリエチレングリコール分画工程

3. クロマトグラフィーによる分画・精製

たん白質の様々な性質と、分離用ゲル(吸着体)の性質を組み合わせて、目的とするたん白質を分離分画する方法です。

① ゲルろ過法

それぞれのたん白質をその形や大きさ(分子量)によって分離する方法で、分子ふるいともいわれています。

② イオン交換クロマトグラフィー

それぞれのたん白質が持つイオン荷電(陽イオン、陰イオン)を利用して分画する方法です。

③ アフィニティクロマトグラフィー

アフィニティ(親和性)クロマトグラフィーは特異的な相互作用を利用して、選択的に吸着・分離精製する方法です。特に、抗体を用いて目的とするたん白質を分離する方法は、イムノアフィニティクロマトグラフィーといわれています。

イオン交換クロマトグラフィー工程

イオン交換クロマトグラフィー工程

審J2312179
参考文献
  • 14)
    大谷 明監修:続医薬品の開発-血液製剤-、廣川書店、1992年

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