薬剤師のハートトーク

血友病患者様への調剤薬局の在宅業務

3人の先生の写真
▲ 永居先生(左から4番目)

1年ほど前に、熊本大学附属病院から、血友病患者様のお薬をご自宅へお届けする、いわゆる在宅業務の依頼があり、私が勤務する調剤薬局にて担当させていただくことになりました。それ以前から、薬局は利用していただいており、それまではご自分で車を運転され、杖をつかれてですが歩行もされて薬を持って帰られていました。
担当するにあたって、問題点が2つありました。まず1つ目は、調剤薬局では、病院とは違い、血友病患者様と接することがなく、知識がほとんどないことです。そこで、熊大の薬剤師の先生から勉強会に誘っていただき、血友病のことや合併して起こる疾患、また患者様の状態や、今までの経過などについて教えていただき、スムーズな在宅業務を始める準備ができました。数カ月が経ち、担当していた患者様が、転倒されてしまい脳出血を起こされて、一時は大変危険な状態となられましたが、懸命な熊大の先生方の治療のおかげもあり、病状が安定されご自宅での生活が出来るまで回復されました。ですが、車椅子での生活を余儀なくされるようになり、ご自分一人での行動が大変難しくなられて、お薬もご自宅まで運んでもらいたいと熊本大学から要望があり、本格的な在宅業務が始まりました。
在宅業務が始まるにあたり、在宅訪問医も熊本大学からの要請で近くの病院で受けていただけることになりました。在宅訪問を担当される先生と、主治医の先生、訪問看護師、薬剤師などの集まりにも参加させていただき、連携の大切さに気付かされました。
2つ目の問題点が、血友病患者様に使う血液製剤が高額なことでした。そのため、薬局で在庫することが難しく、処方された時点で、お薬を発注して、問屋さんのご協力で、すぐに持ってきていただくことができ、患者様にご迷惑をかけずにお渡しすることができました。
また、在宅を進めていくうちに、問題が出てきました。血液製剤の処方が、1回に40本ほど出されており、1~30度の室温で保管しないといけない薬でしたので、真夏は冷蔵庫で保管しないといけませんが、ご自宅の冷蔵庫には入りきりませんでした。そういった時は和室などの涼しい場所や、部屋の比較的日の当たらないところへ保管されていました。病院まで行かれるのに、いろんな方の手を借りないといけないことや本人様のご希望もあり、残薬を調整することがなかなかできませんでした。
そこで、薬局より、小さい物ではありますが冷蔵庫を提供させていただき、なんとかですが入りきるような形となりました。
現在は、新しくできた週に1回の皮下注射に加えて、インヒビター除去のために週に3回使用される静脈注射に変わり、出血も抑えられて、患者様の負担も少なくなられています。今は、訪問看護の方に注射をしてもらっておられて、薬の管理に関して、誰がその薬を持ってきて、誰が打ったのかが一目でわかるような管理表を訪問看護が作ってくださっています。それを冷蔵庫の前に貼ってもらって、情報を共有しています。
新薬を使われるようになって、状態がよくなられたのですが、以前使われていた血液製剤がかなり残ってしまったことは、今後の課題として薬局で取り組んでいきたいと思います。
うちの薬局に来られる患者様へは、残薬調整をさせていただく時、次回受診時に、病院へ行かれる前に薬局の方へ持参していただき、受診後になるべくお待たせしなくても済むように、あらかじめ数などを数えておいて、調整させていただいています。中には、高齢の方で90日分くらいの長い内服処方を出されるような方がおられるのですが、薬を途中で失くされてしまい、自費で薬をもらいに来られたりするような方が時々おられます。そのような方へは、一包化し、服用される日付を入れて、30日分ずつお渡しするようにして、改善するようなこともあります。
今後、在宅業務をさせていただく中で、患者様の状態や、残薬の報告などを細かく主治医の先生へさせていただき、患者様の負担を少しでも軽くし、無駄になるような薬がなくなるようスタッフ全員で、日々努力していきたいと思います。

(2018年Vol.59冬号)
審J2005102

永居 えい子 熊本南前薬局